2020 Fiscal Year Research-status Report
配列特異的翻訳抑制蛋白質によるHippo-YAP経路の制御
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20K07590
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大谷 淳二 神戸大学, 医学研究科, 助教 (10770878)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Hippo経路 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
多種類のがんで転写共役因子YAP/TAZの異常な活性化が認められ、その活性を抑制するHippo経路の構成因子欠損マウスにおいて、種々のがんが早期から高率に発症することから、Hippo-YAP経路のがんの発症、進展における役割に注目が集まっている。本研究では、ゲノムワイドsiRNAスクリーニングにより、YAP依存的な遺伝子転写活性に強力に作用する薬剤標的分子を同定し、YAP活性を標的とした抗腫瘍薬の開発に貢献することを目指している。これまでの検討から、配列特異的RNA結合ドメインを持ち、mRNAの分解、翻訳抑制に働く蛋白質RNABPがYAPによる遺伝子転写活性に必要であることが示唆されていた。 本年度は配列特異的翻訳抑制蛋白質RNABPの発現をドキシサイクリンにより制御できる細胞株を作成した。RNABPの発現をオフにするとYAP依存的な遺伝子転写は顕著に不活化された。野生型のRNABP遺伝子を導入するとYAP依存的な転写活性は回復したが、RNA結合のできない変異体を戻しても回復しなかったことから、YAP活性の制御にはRNAとの相互作用が重要であることが示唆された。RNABPの抑制標的遺伝子を同定するため、マイクロアレイ解析および免疫沈降実験を行い、RNABPの発現遮断によりmRNA発現量が大きく増加し、RNABP蛋白質と結合する標的遺伝子を同定した。さらに、CRISPR/Cas9を用いて、RNABPの標的遺伝子のノックアウト細胞を作成し、RNABPのノックアウトによるYAP活性の低下は、部分的に標的遺伝子の過剰発現を介していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はRNABPにより、mRNA、蛋白質量のレベルで発現抑制を受ける標的遺伝子を同定することに成功し、YAP/TAZ依存的な遺伝子転写活性への寄与を、ノックアウト細胞株を作成することで示した。RNABPによるYAP/TAZ活性の制御の分子機構の一端を明らかにできたことから、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
RNABPの発現をドキシサイクリンにより制御できる細胞株を作成したことにより、RNABPによるYAP/TAZの活性化が明らかになった。今後は、RNABP-標的RNA間の結合を阻害する低分子化合物の探索に向け、スクリーニング系を作る。また、RNABPのショウジョウバエホモログ遺伝子の解析から、RNABPは1000を超えるmRNAと結合し、その発現を抑制することが報告されていること、同定した標的遺伝子のノックアウトにより、部分的にしかYAP/TAZの活性が回復しないことから、他の分子、機構を介したYAP/TAZの制御があると考えられる。RNABPのノックアウト細胞では、細胞-基質間接着に異常が生じている可能性を示すデータを得ており、これがYAP/TAZの活性制御にも寄与する可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
所属研究室の余剰試薬等を譲り受けたことから、当初の予定より、必要な試薬等の購入にかかる費用が安価で済んだため、繰越金額が生じた。 次年度使用額は主にRNAシークエンスの受託解析及び消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)