2022 Fiscal Year Annual Research Report
癌幹細胞の命運を決定する代謝物質の同定とその機能解析
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20K07598
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北島 正二朗 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(藤沢), 特任講師 (00452590)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞代謝 / 癌幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、がん幹細胞の増殖制御に関わる代謝物質のスクリーニングを試み8種類に絞り込んだ。その代謝物質群に核酸類が複数含まれていたことから、PEO1-SL/-NS細胞を用い、AMP, ADP, ATPなどの1~3リン酸ヌクレオチド、Adenosineなどのヌクレオシドと関連物質の合計16種類を無血清培地中に投与し、細胞増殖への影響を検討した。興味深いことに、特にPEO1-NS細胞ではATP, UTPによって特に強く増殖が亢進した一方、GTP, CTPへの反応は限定的であった。またADPなど2リン酸のヌクレオチドへの明確な反応は見られなかった。こうした核酸類への反応パターンを解析した結果、栄養ストレス状態における増殖促進は、P2Y型レセプターを介していることが推察された。そこで、ATPやUTPに特異的に結合するP2RY2, P2RY4, P2RY11の発現をshRNAによって恒常的に抑制したところ、PEO1-NSでは致死的に作用し、安定株が得られなかった。一方でPEO1-SL細胞では問題なく安定株が樹立できた。これらの結果は、PEO1-NS細胞ではATP/UTPシグナル-P2Yレセプターの経路に依存して増殖しており、低栄養やATP投与に感受性がある一方、PEO-SL細胞はこうした経路には依存していないことを示唆している。次に同様の経路依存を、19種類の卵巣がん細胞株を用いて調べたところ、11種類の細胞が低栄養状態でATP/UTPにより増殖促進されたことから、同様の経路が幅広く働いていることがわかった。さらにこれらの経路の詳細を検討し、AKT, ERK, などの因子がタンパク質レベルでATP/UTP投与に反応して発現亢進・活性化していることや、低栄養で減弱したde novo核酸生合成が回復するなどが明らかとなり、現在まで更なる詳細の解析を進めている。
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Research Products
(3 results)