2021 Fiscal Year Research-status Report
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20K07603
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
坂原 瑞穂 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 研究員 (00572314)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消化管腫瘍 / 発がんモデルマウス / 細胞多様性 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、オルガノイド遺伝子発現解析(バルク解析、一細胞遺伝子発現解析)結果を基に、Kras変異と相関する分子を絞り込み、消化管腫瘍モデルマウスを用いた個体レベルの検証を行った。 同定した液性因子の腫瘍組織での発現を調べるため、消化管腫瘍モデルマウスの腫瘍組織を用いた免疫組織化学染色を行った。その結果、Kras変異に伴う増加が認められる細胞種特異的に発現が認められた。腫瘍形成における液性因子の関与を明らかにするため、Apc/Kras二重変異マウスへ中和抗体投与を短期間行った。コントロール投与群と比較して腫瘍形成に対する有意な差は認められなかったが、腫瘍微小環境中の骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)やCD8 T細胞の変化が明らかとなった。また、同定された液性因子の受容体阻害剤を、Apc/Kras二重変異マウスに投与すると、腫瘍形成に影響が生じることを見出した。これらの結果から、Apc/Kras二重変異マウスの腫瘍形成には、液性因子が重要な役割を果たす可能性が示唆された。 Kras変異による細胞多様性の変化が、腫瘍微小環境変化を引き起こすのかを明らかにするため、Apc/Kras二重変異マウスにγ-セクレターゼ阻害剤DBZ投与実験を行った。その結果、令和2年度に明らかにしたDBZ投与による腫瘍組織構成細胞割合の変化に加え、MDSCやCD8T細胞の変化をFACS解析と免疫組織化学染色により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス消化管組織由来オルガノイドの遺伝子発現解析によって同定した「Kras変異と相関する分子」の一つ「液性因子」について、腫瘍形成に関与する免疫細胞の変化を引き起こすことを明らかにできた。また、液性因子と受容体との相互作用を阻害するマウス個体レベルの実験系を確立できたことから、免疫チェックポイント阻害剤やRASシグナル伝達関連阻害剤との併用投与による腫瘍形成への影響を検証する準備が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に明らかにした「液性因子と受容体」に関して、治療標的分子としての有効性をマウス個体レベルで検証する。また、既存の大腸がん治療薬との併用投与による治療有効性についても検証する。具体的には、免疫チェックポイント阻害剤・MEK阻害剤・KRAS(G12D)阻害剤等との併用投与をApc/Kras二重変異マウスに行い、腫瘍形成および腫瘍微小環境中の免疫細胞への影響を調べる。 これらの研究を通して、遺伝子変異等による適応対象外大腸がんへの新たな治療開発の基盤となりうる新たな概念の提示を目指す。
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Causes of Carryover |
オルガノイド遺伝子発現解析を基に同定した分子に関して、マウス個体レベルでの薬剤投与の実験計画を見直した結果、当初の予定よりも購入量が少なくなったため。 令和3年度の予備実験結果に基づき、治療標的となりうる分子・現象に焦点を絞り、それらに対するマウス個体レベル実証実験用の試薬購入に充当する。
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Remarks |
研究発表 ・ 坂原瑞穂、八尾良司、「Kras変異に伴う消化管腫瘍組織の変化」、新学術領域「先端モデル動物支援プラットフォーム」2021年度若手支援技術講習会、口頭発表、2021年
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