2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20K07603
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
坂原 瑞穂 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞生物部, 博士研究員 (00572314)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 消化管腫瘍 / 発がんモデルマウス / 細胞多様性 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸がんはAPC変異によって生じた腺腫に、RAS遺伝子等の様々な遺伝子変異が蓄積することで悪性化する。また、治療抵抗性の一因として、大腸がん組織が「増殖能や分化形質の異なる様々な細胞種で構成されている」という細胞多様性が挙げられる。本研究課題では、大腸がん組織の細胞多様性の機能的意義を明らかにすることを目的とし、マウス消化管組織由来オルガノイドを用いた遺伝子発現解析および自然発症消化管腫瘍モデルマウスを用いた機能的実証を行った。 オルガノイド遺伝子発現解析(バルク解析・一細胞遺伝子発現解析)から、Kras変異に伴って増加する細胞種と液性因子を同定した。同定した細胞種は、消化管腫瘍モデルマウスの腫瘍組織で液性因子を分泌していることを明らかにした。同定した液性因子の中和抗体をApc/Kras二重変異消化管腫瘍マウスに投与した結果、腫瘍微小環境への免疫細胞動員の変化が明らかとなった。また、同定した液性因子の受容体阻害剤をApc/Kras二重変異消化管腫瘍マウスに投与すると、腫瘍形成に影響が生じることを見出した。さらに、受容体阻害剤とMEK阻害剤の併用投与は、単剤投与と比較して、より腫瘍形成に影響を生じさせた。 Apc/Kras二重変異消化管腫瘍マウスにおいて、消化管細胞の分化をγ-セクレターゼ阻害剤投与により人為的に変えた結果、腫瘍微小環境の変化とともに腫瘍形成に影響が生じることを見出した。 これらの結果は、Kras変異腫瘍細胞がRASシグナル伝達経路を介した細胞増殖等の制御だけでなく、液性因子を介して腫瘍微小環境も制御している可能性を示唆しており、RAS変異大腸がんにおける免疫療法抵抗性等の制御機構を解明する上での、新たな概念の提示につながると期待される。
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