2020 Fiscal Year Research-status Report
p53を野生型で持つがんにおけるがん化促進的なp53-IER5経路の機能解明
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20K07605
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
青木 清乃 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (10383291)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大木 理恵子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 独立ユニット長 (70356252)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | p53 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
p53標的遺伝子の中には、我々が機能を解明したIER5遺伝子のように、がん化促進的に働くものがある。IER5は、p53が野生型のがんで過剰発現しており、ストレス応答のマスターレギュレーターであるHSF1を活性化することでがん細胞をストレスから保護し、がん化促進に寄与する。このようなp53標的遺伝子の存在は、特定の状況下ではp53ががん化促進的に機能する可能性があることを強く示唆する。本研究課題においては、がんの発生と悪性化・転移・抗がん剤耐性獲得におけるp53と IER5が果たす役割を解析し、「特定のがん種ではp53が野生型のままである理由」を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
問題なく研究は進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、p53が野生型の神経内分泌腫瘍(NET)・腎がん・メラノーマ・神経膠腫において、がんの発生と悪性化・転移・治療抵抗性獲得におけるp53、IER5の機能に着目し、下記A-Cの研究を進める。 A: NETにおけるp53-IER5経路の機能解明:我々はIER5のconventional及びconditional KOマウスの作製に成功した。さらに、これまでに独自の膵・下垂体・甲状腺のNETのマウスモデルを開発している。これらのマウスは、p53が野生型の悪性度の高いNETを発症する。そこで、NETのマウスモデルとIER5欠損マウスを掛け合わせ、p53-IER5経路がこの腫瘍においてがん化促進的に働くか解析する。 B: ヒト腎がん及び皮膚メラノーマ細胞の転移能とp53、IER5機能との関連の解析:ヒト腎がん及び皮膚メラノーマのp53変異は低頻度であることが知られており、がん化・転移に野生型p53を必要とする可能性がある。そこでp53野生型である転移性腎がん・メラノーマ細胞株を用い、p53あるいはIER5をノックダウンし、尾静脈移植による肺転移、尾動脈移植による骨転移の系により転移巣形成を評価する。 C: 神経膠腫細胞の抗がん剤耐性獲得とp53、IER5機能との関連の解析:神経膠腫のp53野生型症例は極めて予後が不良である。抗がん剤治療時に、p53-IER5経路によって付与されるストレス抵抗性が、がんの治療抵抗性につながり、予後不良となっている可能性がある。そこで、p53が野生型の神経膠腫株を用い、p53あるいはIER5をノックダウンし、p53-IER5経路が抗がん剤耐性に果たす役割を解析する。
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