2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the control system of intravenous tumor thrombus formation by long-noncoding RNA in hepatocellular carcinoma
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20K07608
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲垣 善則 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40733390)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 脈管腫瘍栓 / 長鎖非コードRNA / 浸潤 / 上皮間葉転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、肝細胞癌(HCC)症例由来の原発巣組織と腫瘍栓組織を用いた網羅的な遺伝子解析により、腫瘍栓組織で発現変動する長鎖非コードRNAを探索した。その結果、腫瘍栓組織における発現が原発巣組織と比較して2倍以上変動した長鎖ノンコーディングRNAは52種類で、そのうち腫瘍栓組織で2倍以上発現上昇したものは46種類、2倍以上発現低下したものは6種類であった。予備的研究で実施したCancer Genome Atlasを用いた解析においてHCC組織における発現上昇が示された長鎖非コードRNAと一致したものは、CRNDEとLINC00665の2種類であった。これらの長鎖非コードに着目し、HCC細胞における長鎖非コードRNAの発現をsiRNAの導入により制御した細胞を樹立し、人工マトリゲルを用いたチャンバーアッセイを実施して細胞の浸潤性の変化を解析した。その結果、CRNDEあるいはLINC00665の発現低下を誘導させた条件の浸潤細胞数は、対照となるsiRNAを作用させた条件と比較して減少した。なお、細胞の増殖に関しては、それぞれのsiRNAを作用させた条件の間で有意差は生じなかった。また、生体内でのHCC細胞の浸潤性や転移性への効果を検討するためのin vivo肝転移モデルの構築を図った。当該実験では、大腸癌細胞を脾臓に移植すると肝臓に移動して転移巣を形成するモデルを応用して、細胞種をHCC細胞に変更したモデルが確立できるか検討した。その結果、脾臓にHuH-7細胞を移植して3週間後の肝臓に腫瘍が形成された。従って、HCC細胞を脾臓移植する肝転移モデルマウスを構築できたと考えられ、今後は上記の研究で発現変動が浸潤能に影響する長鎖ノンコーディングRNAの恒常的発現変動を誘導させた細胞を構築して、in vivoでの転移巣形成への効果を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、HCCの腫瘍栓における遺伝子発現を解析して、発現性が変動している長鎖非コードRNAを示した。さらに、当該長鎖非コードRNAの発現性を制御した細胞を樹立し、浸潤性への影響をin vitroで解析し、長鎖非コードの発現性が細胞の性質に与える効果を明らかにした。これらの成果は、当該年度開始時に進捗が期待されたものに相当すると考えており、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
モデル実験系を用いた基礎医学的解析による長鎖非コードRNAの機能的役割の解明に関する研究を主体的に進める計画である。上記の通り、生体内におけるHCC細胞の浸潤性や転移性を解析するためのin vivo実験系を樹立した。この実験系を利用して、HCC細胞の浸潤性への影響が示唆された長鎖非コードRNAの発現が生体内での浸潤性や転移性へも同様に影響を及ぼすことを証明する。一方、病態の異なる症例間における長鎖非コードRNAの発現性の検討を実施し、高度に発現変動のある長鎖非コードRNAの発現変動が多くの症例において有意に誘導されるものか否かを検討する。肝切除を施行したHCC症例の癌部組織を用いて、該当する長鎖非コードRNAの発現性をReal time PCR法を実施して解析する。そして、長鎖非コードRNAの発現とHCC症例の各種臨床病理因子(門脈浸潤、静脈浸潤、動脈浸潤、肝内転移、肝外転移など)との比較解析や症例群の予後解析を総計学的に実施し、長鎖非コードRNAの発現性と病理学的現象との連関性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該年度における実験動物を用いた実験が当初の計画よりも小規模となったため、実験動物の購入及びそれに関係する試薬の購入に充当予定だった経費が次年度使用額として発生した。次年度は、HCC細胞を用いたin vivo実験系を主体的に実施することから、当該経費を実験動物購入のための経費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)