2021 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴うPD-1経路阻害治療耐性の機構解明と制御法の確立
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20K07615
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
和久 由佳 (仲島由佳) 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員 (40399499)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 免疫老化 / CD8陽性細胞 / 1炭素代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
T細胞老化のミトコンドリア代謝への影響を解析するために、若齢と加齢のマウスからCD8陽性細胞を単離し酸素消費速度の測定をSeahorse XFを用いて行った。その結果、基礎呼吸、ATP産生および最大呼吸量が優位に加齢により低下することが確認された。前年度のマイクロアレイを用いた結果から、加齢マウスにおいて著しく誘導が抑制されているCD8陽性細胞群であるP4細胞において1炭素代謝に関わる遺伝子群が発現増加していることを見出している。1炭素代謝は核酸合成やメチル化などの修飾のみならず、ミトコンドリアの生合成にも関与することが報告されているため、P4細胞誘導が抑制されている高齢マウスでは1炭素代謝の低下によりミトコンドリア生合成が阻害され、その結果、ミトコンドリア代謝が若齢マウスよりも低下している可能性が示唆された。 これまでに、あるアジュバント法が加齢マウスにおいてP4細胞を誘導し、PD-1阻害治療による抗腫瘍効果を亢進させることを明らかにしている。そこで、この作用機序を解明するために、アジュバント注射を行ったマウスから単離したナイーブ細胞を用いて、網羅的な遺伝子発現比較を行った。若齢マウス細胞との比較の結果、抑制性のフォスファターゼの発現が加齢マウスのナイーブ細胞で亢進し、アジュバント注射により抑制されることが明らかになった。この加齢による抑制性フォスファターゼの発現亢進は、FACSによる解析でも確認された。さらにこのアジュバント処理は、加齢マウスにおけるP4細胞の誘導増加に加えて、ミトコンドリア代謝も回復することが酸素消費速度の測定により明らかになった。また、担がん加齢マウスにおいて腫瘍浸潤リンパ球の数や抗原特異的なCD8陽性細胞の数がこのアジュバント処理により増加していることをFACS解析により明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した通りに実験を遂行し、本年度の目標を達成出来たため。
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Strategy for Future Research Activity |
網羅的な遺伝子発現比較により同定された加齢に伴い発現増加する抑制性フォスファターゼに対する阻害剤を投与することで、加齢により引き起こされるPD-1阻害治療耐性が回復するかどうかを担がんマウスモデルを用いて検討する。さらに、高齢マウスにおいて抑制されていやCD8陽性T細胞の機能がこの阻害剤で改善するかどうかを検討する。 次に抑制性フォスファターゼの発現制御機構を検討するために、この因子の発現が高いT細胞と低いT細胞を単離し、遺伝子発現解析を行う。この解析により抑制性フォスファターゼの発現制御に関わる遺伝子や経路を予測し、RT-PCRやFACSにより、それらの発現を確認する。さらに、これまでに同定した老化により変化するT細胞の機能との相関を検討し、加齢に伴う抑制性フォスファターゼの発現制御機構に最も重要な因子や経路を同定する。
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Research Products
(6 results)