2021 Fiscal Year Research-status Report
膠芽腫幹細胞を標的としたtRNAメチル化酵素阻害剤による制がん戦略の構築
Project/Area Number |
20K07618
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
藤村 篤史 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (10771082)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 吉伸 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 教授 (00305004)
黒住 和彦 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20509608)
富澤 一仁 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (40274287)
安藤 隆幸 静岡県環境衛生科学研究所, 医薬食品部, 主査 (40402226)
増本 年男 鳥取大学, 医学部, 助教 (40715083)
中村 仁 静岡県環境衛生科学研究所, 医薬食品部, 主任 (50828407) [Withdrawn]
魏 范研 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90555773)
工藤 晃大 静岡県環境衛生科学研究所, 医薬食品部, 主任 (40911433)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 膠芽腫 / がん幹細胞 / 翻訳制御機構 / タンパク質合成 / 低分子化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
膠芽腫幹細胞において、特定の核酸修飾酵素が幹細胞性の維持に必須であることを細胞レベル・動物レベルで実証した。具体的には、当該酵素をコードする遺伝子に対するLoss-of-functionを行うことで、膠芽腫幹細胞株の未分化マーカーが脱落し、自己複製能が著しく減弱し、さらに造腫瘍能が低下することを確認した。当該酵素に対する阻害剤を用いることで、細胞レベルで膠芽腫幹細胞の幹細胞性が減弱することが実証できたが、担がんモデルマウスにおいては、その抗がん作用は必ずしも強力なものではなかった。このことは、当初の阻害剤の脳組織移行性が十分ではなかった点と、モデルマウスの血液中の代謝安定性が十分に高いものでなかったことに起因すると予測された。次年度以降の課題としては、上記の課題を克服できるような類縁体をデザインすることであり、同様のモデルマウスで検証を継続する。上記の課題と並行して、当初の化合物が奏功しうる膠芽腫患者と奏功が期待しがたい患者の層別化をはかる遺伝子群の解析を進めたところ、具体的に機能が未知の遺伝子を2つ同定することに成功した。それぞれの機能解析を進めたところ、一方では転写制御に関連する因子群のひとつであると推測され、もう一方では細胞内アミノ酸代謝に強く関連する因子群のひとつであることが予測された。次年度以降、これらの機能未知の遺伝子の解析を進めるとともに、特定の核酸修飾酵素とのクロストーク等を探っていくことを目指す。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
特定の核酸修飾酵素の膠芽腫における機能を十分に解析し、それを標的とすることが良い抗がん剤開発に直結しうることが実証できており、さらにその化合物が主に細胞レベルで強い抗がん作用を発揮することを実証できている。同所性脳腫瘍モデルマウスでも同様に強力な抗がん作用が発揮できるために、類縁体をデザインする必要があることを確認できているため、次年度以降に明確な目標が設定できている。さらに、当該酵素を標的とする阻害剤の抗がん作用を予測できる遺伝子群の発現について、具体的に2つの機能未知の遺伝子を同定しており、すでにその機能の解析に着手できている。以上の理由から、本課題は当初の計画以上に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究課題に基づき、真に革新的な抗がん剤を社会導出するためには、現在の化合物の脳組織移行性を向上させ、さらに血中の代謝安定性を向上させる必要がある。この目的のためには、化合物の類縁体をデザインしなおす必要があるため、次年度以降はこれに注力する。さらに、本研究課題から派生して、新規の機能未知な遺伝子を2つ同定しており、すでにそれらの機能解析に着手できている。実際に、ひとつは転写調節に関与することと推測し、もう一方は細胞内代謝に関与することを推測しているため、これらの機能と当初の標的酵素との関連を継続的に解析することを目標とする。具体的には、それぞれの因子によるクロストークを、分子生物学的・生化学的手法を用いて解析する予定である。
|
Causes of Carryover |
予定していたが取り組めなった課題については、次年度に実施する予定である。
|