2020 Fiscal Year Research-status Report
酸化的リン酸化を標的とした新規がん幹細胞標的治療戦略の開発
Project/Area Number |
20K07631
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
岡田 雅司 山形大学, 医学部, 講師 (70512614)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | がん幹細胞 / 酸化的リン酸化 / OXPHOS / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに我々は腫瘍中のごく一部似存在し腫瘍の発生・維持に必須の働きをするがん幹細胞(CSC)を制圧するための薬剤開発研究を行ってきた。本課題までに我々は、生薬由来成分であるリコカルコンAが正常細胞、神経幹細胞および非がん幹細胞(non-CSC)には影響を与えること無くCSCを殺傷する事、CSCはnon-CSC比較してOXPHOSが高くリコカルコンAはこのCSCのOXPHOSを標的としていることを見出したことから、CSCの高いOXPHOSは治療標的になり得ること、OXPHOS抑制によりCSC数を減少可能であることを報告してきた。このような背景の中我々は、グリオーマ幹細胞(GSC)と非グリオーマ幹細胞(non-GSC)に対し各種ミトコンドリア呼吸鎖複合体選択的阻害薬処理を行うことでGSCはOXPHOSにより生存を依存していること、YAP阻害薬であるverteporfin (VPF)がグリオーマ幹細胞(GSC)に対してOXPHOS阻害薬として働き選択的に細胞死を誘導することを見出した。また、高いOXPHOSを維持するためにβ酸化がより必要となることから細胞内脂肪酸蓄積に着目し、PPARαおよび脂肪滴蓄積の阻害がCSCの幹細胞性を抑制することを明らかにし、各々、国際誌に発表し受理された。また、前課題から引き続き行っている研究「適応拡大を用いたCSC阻害作用を持つ薬剤の開発」として、グルココルチコイドであり制吐剤などとして広範囲に渡って臨床現場で利用されているデキサメサゾンが膵がん幹細胞の幹細胞性を抑制可能であることを報告した。以上、本年度は、その他の研究も含めて6報の論文を国際誌に発表することができた。 加えて現在、ミトコンドリア活性に関係するCSC選択的阻害薬をスクリーニングした結果、候補薬剤を数個見出すことに成功し、鋭意さらなる研究を続けている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時点で得られていた、YAP阻害薬であるVPFを用いた予備的知見から、試行回数を重ねつつ追加実験を行った結果、VPFはGSCのOXPHOSを選択的に抑制すること、加えて、GSC選択的に細胞死を誘導することを見出した。この時、必要なVPFの濃度は臨床で用いられている血中最高濃度(約2.6μM)に比べて十分に低い濃度(0.2-0.4μM)で効果があることを明らかにした。加えてGSCとnon-GSCに対し各種ミトコンドリア呼吸鎖複合体選択的阻害薬処理を行うことでGSCはOXPHOSにより生存を依存していることも詳細に明らかにした。また、我々はCSCは高いOXPHOSを維持するためにβ酸化が必要となると考えられ、脂肪酸代謝に着目し研究を行った。すると、脂肪酸代謝酵素群のなかでPPARαがCSC中で高活性を示し、PPARαおよびその上流である脂肪滴の蓄積阻害がCSCの幹細胞性を抑制することを明らかにした。さらに、ミトコンドリア活性に関係するCSC選択的阻害薬をスクリーニングした結果、候補薬剤を新たに数個見出すことに成功した。本年度立ち上げたin vitroの実験系を用いて、これらの薬剤がCSCおよびGSCに対してnon-CSC, non-GSCと比較して選択的な毒性があることを詳細に確認し、さらに、現在、ヌードマウスを用いたin vivo実験系を立ち上げ、これらの薬剤の効果を検討中である。 以上の研究活動を総合的に判断すると、当初の計画以上に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、数種類のCSC/GSCのミトコンドリア活性を抑制する薬剤をスクリーニングにより見出し、少なくともin vitroにおいて、CSC/GSCに対する選択的毒性を有することを確認したが、in vivoにおいては現在検証中であり、単なる単癌モデルを用いた腫瘍形成抑制効果のみではなく、連続移植実験を用いたCSC/GSC数減少効果も検証する予定であることから、引き続き試験が必要であると考えられる。また、これらミトコンドリア活性阻害薬単剤での効果だけでなく、CSC/GSC分化誘導剤とも併用することによる治癒モデルの作成も予定していることから、併用実験も引き続き試験する予定となっている。
|
Causes of Carryover |
(理由)現在、見出した薬剤のin vivoでの効果を検証するためにヌードマウスを用いた実験を立ち上げ、行いつつあるが、基本的にこれらin vivo実験は長期に渡って経過観察や薬剤投与を行うことから、飼育費や薬品などに費用が必要なため。 (使用計画)上述したように、現在進行中のin vivoマウスモデルを用いた実験に必要な投与薬剤や飼育料・技術料として使用する予定である。
|
-
[Journal Article] Roles for hENT1 and dCK in gemcitabine sensitivity and malignancy of meningioma.2021
Author(s)
Yamamoto M, Sanomachi T, Suzuki S, Uchida H, Yonezawa H, Higa N, Takajo T, Yamada Y, Sugai A, Togashi K, Seino S, Okada M, Sonoda Y, Hirano H, Yoshimoto K, Kitanaka C.
-
Journal Title
Neuro Oncol.
Volume: 23(6)
Pages: 945-954
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
[Journal Article] Doxazosin, a Classic Alpha 1-Adrenoceptor Antagonist, Overcomes Osimertinib Resistance in Cancer Cells via the Upregulation of Autophagy as Drug Repurposing.2020
Author(s)
Suzuki S, Yamamoto M, Sanomachi T, Togashi K, Sugai A, Seino S, Okada M, Yoshioka T, Kitanaka C.
-
Journal Title
Biomedicines.
Volume: 8(8)
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-