2020 Fiscal Year Research-status Report
インテグリン分子を標的とした非小細胞肺癌の新規治療の開発
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20K07632
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿毛 秀宣 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80513390)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | インテグリン / 肺癌 / 膜タンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本研究では肺癌においITGA2、ITGA5が治療標的となるかどうかを解明することにある。 ①ITGA2、ITGA5高発現肺癌の解析 当院の肺癌切除検体100例を用いてITGA2、ITGAの発現量の中央値をカットオフとしてITGA2、ITGA5高発現群、低発現群を比較し、ともに高発現群で術後再発を多く認めた。高発現・低発現群に病期の差は見られず、ITGA2・ITGA5の発現量と原発巣の腫瘍径(TNNM分類のT因子)に相関を認めなかった。ITGA5高発現群は血管浸潤が有意に多かったがITGA2は差を認めず、ITGA2・ITGA5ともにリンパ管浸潤は両群に差を認めなかった。 ②ITGA2とITGA5による肺癌細胞の悪性度の変化 ITGA2では肺癌細胞株であるH522細胞とH661細胞、ITGA5はH522細胞とH2170細胞がそれぞれの低発現細胞株であり、それぞれにレンチウイルスベクターを用いて強制発現細胞株を作成した。ITGA2はqPCRとWestern blot、ITGA5はWestern blotで強制発現を確認した。in vitroの機能解析は細胞株をITGA2とITGA5のリガンドであるコラーゲンとフィブロネクチン上に培養して行った。はじめに細胞面積を確認し、ITGA2、ITGA5ともにを強制発現すると面積の増加を認めた。細胞外基質リガンドへの接着能はITGA2、ITGA5ともにを強制発現株で亢進していた。増殖能は両者とも変化を認めなかった。遊走能は両者とも亢進していた。以上より、ITGA2、ITGA5を強制発現すると細胞面積の増加、細胞外基質への接着能の亢進、および遊走能の亢進を認めた。 まとめ:ITGA2、ITGA5を高発現する肺癌は細胞外基質への接着能の亢進と遊走能の亢進を介して悪性度の亢進と再発率の増加に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4年間の計画で、当初の4つの目的のうち2つがほぼ目途が立っている。当初の目的とは、①免疫染色においてITGA2、ITGA5の高発現は予後不良であることを確認する、②ITGA2とITGA5が肺癌細胞の悪性度に寄与するか解析する、③肺癌細胞株で抗ITGA2治療および抗ITGA5治療の抗腫瘍効果を確認する、④in vivoで抗ITGA2治療および抗ITGA5治療の抗腫瘍効果を確認するの4点である。今後は①と②の解析をまとめつつ、ITGA2とITGA5が治療標的となりうるか、③、④の解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、③肺癌細胞株で抗ITGA2治療および抗ITGA5治療の抗腫瘍効果を確認するにすでに着手している。ただし、抗ITGA2抗体を用いた抗体薬物複合体による治療の予備実験では現在のところ治療効果を認めていない。今後は一次抗体の妥当性を再確認した上で、さらに条件検討を加えて最適化を試みる。また抗ITGA2作用を持つ小分子化合物の治療効果も確認する予定である。いずれかの方法でin vitroで有効性が示唆されればマウスモデルを用いて治療効果を検討する(目的④)。
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