2021 Fiscal Year Research-status Report
アルファ線内用療法用アスタチン211の安全で簡便な標識法の開発
Project/Area Number |
20K07648
|
Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
渡辺 茂樹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主幹研究員 (10450305)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 圭一 群馬大学, 大学院理工学府, 准教授 (70323334)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アスタチン-211 / 陰イオン交換法 / 湿式分離 / 標的アイソトープ治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
α線内用療法での利用が期待されているアスタチン-211(At-211)の薬剤化工程において、人体や薬剤活性に悪影響を及ぼす毒劇物や酸化剤の使用と、それらの 除去のために必要な精製過程での収率ロスが、実用化に向けた課題となっている。そこで、本研究では「毒劇物と酸化剤を使用しない安全で簡便なAt-211標識法」の開発を目的として、At-211の化学種をコントロールできる湿式法と低毒性のケイ素前駆体を用いるケイ素-アスタチン交換反応を組み合わせた新規標識法の可能性と問題点を明らかにする。 今年度は、量研高崎研のAVFサイクロトロンを用いて生成したAt-211を陰イオン交換固相抽出遠心カラムで分離した後、トリメチルシリル基を含むベンジルグアニジン(3-トリメチルシリルを混合し、酸化剤(N-クロロスクシンイミド)存在下でのケイ素-アスタチン交換反応によるAt-211標識を行った。その結果、炭酸カリウム水溶液で溶出したAt-211溶液を用いた標識では、酸化剤存在下で収率32~39%で目的物を得ることができたのに対し、炭酸カリウム水溶液で溶出したAt-211溶液を中和した場合、酸化剤存在下でも目的物が全く得られないことがわかった。以上の結果から、ケイ素-アスタチン交換反応においてはスズ―アスタチン交換反応と異なりAt-211を含む中和溶液では反応が進行しない可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属機関の方針によるサイクロトロン施設の運転時間の大幅な減少と、その影響による放射線管理区域の稼働停止期間が長くなった結果、当初予定していたAt-211製造を実施できなかった。また、本来標識反応が効率よく進行するはずの「酸化剤存在下での反応」が、中和したAt-211溶液では進行せず想定外の結果となった。これらのことから、研究は当初の予定よりも遅れている状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、前年度実施できなかった湿式法により分離したAt-211水溶液のpH、酸化還元電位および化学形に関するデータを取得すると共に、酸化剤非存在下でのケイ素-アスタチン交換反応によるAt-211標識の可能性と問題点について、さらに明らかにする予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言の発出に伴い、当初予定していた実験が実施できなかったこと、また予定した学術集会がオンライン開催となり、計上していた国内調査費、研究成果発表ための参加費の発生がなくなったため次年度使用額が生じた。令和4年度は、実施できなかった実験で使用する試薬・消耗品等の購入に充当する予定である。
|