2022 Fiscal Year Annual Research Report
細胞リプログラミングを用いたT細胞疲弊解除の分子機構の解析
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20K07651
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大内 靖夫 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (70553858)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん免疫療法 / 部分的初期化 / T細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、がん免疫療法が「第四の治療法」として注目されている。しかし、その治療効果は限定的であり、老化やがんの発症に伴うT細胞の不可逆的な機能不全、 すなわちT細胞の疲弊化が本治療の効果を減弱させる要因の一つであると考えられている。そこで本研究課題では海外共同研究者が実証したPartial Reprogramming(部分的初期化)技術、すなわち一過性に山中4因子を発現させて細胞を部分的に初期化させる技術に着目し、老化やがんの発症に伴うT細胞の疲弊を解除する方法を明らかにし、がん免疫細胞療法の確立に有効な新規のT細胞再生技術を開発することを目的とした。令和2年度、研究計画に従いDox依存性に山中4因子を発現する遺伝子改変マウス(4F-Tg)由来CD8(+)T細胞の機能およびトランスクリプトーム解析から、部分的初期化により細胞増殖の誘導、T細胞の疲弊解除に重要と考えられる転写因子TCF7の発現上昇、T細胞疲弊マーカーの減弱が確認された。令和3年度、ヒトT細胞への本技術の応用と老齢マウスでの部分的初期化による細胞若返りの分子機構の解明を進めた。その結果、ヒトT細胞においてもマウスと同様に細胞増殖の誘導、T細胞疲弊マーカーの減弱が確認された。これらの結果より、山中4因子の一過性発現による部分的初期化は、マウス、ヒトにおける老化・疲弊T細胞の再生においても有効である可能性が示唆された。 最終年度、部分的初期化処理をしたT細胞の機能解析を進める計画であったが、令和4年度に本研究開発と同様の技術が米国のがん免疫療法の企業に学会発表されて特許も公開されてしまった。このため研究費の執行を一時停止して年度終了時まで研究計画の見直しを図ったが、本研究成果の学術発表と将来的な産業利用が困難な状況であったことから年度終了をもって研究を終了した。
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