2021 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of usefulness of romosozumab for cancer treatment-induced bone loss in breast cancer
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20K07663
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
田口 哲也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80243260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 晃一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00405284)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 癌治療関連骨減少 / 骨粗鬆症 / スクレロスチン / ロモソズマブ / WNTシグナル / 乳癌 / 補助ホルモン療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗スクレロスチン抗体ロモソズマブが乳癌患者の癌治療関連減少に有用な薬剤になりえるのか検証するために、乳癌細胞・乳癌組織にスクレロスチンが発現しているということやスクレロスチンが抑制的に働くWNTシグナル経路に対してWNTを過剰発現させた乳腺細胞は過形成を経て腫瘍形成するなどの報告があるが、スクレロスチンはほとんど骨細胞選択的に発現しており、WNTシグナル経路は主にオートクライン/パラクラインで局所的に制御されるため、ロモソズマブの骨細胞以外の細胞への影響は限定的であると考えられていて、少数例への投与では特に問題ないと報告されてはいるが、乳癌患者への抗スクレロスチン抗体投与の原病への影響については明らかではない。 まずは、安全性、有効性を検討するにあたり、乳癌細胞への増殖活性の有無やより悪性度の高い形質への転換の有無をin vitroで評価した。今回、スクレロスチンの発現が確認された乳腺正常細胞及び乳がん細胞株(MCF10A, MDA-MB-231, MCF7, SK-BR3)を用いて、ロモソズマブの効果を検討した。まず、細胞増殖アッセイにて、0-80mg/mLの濃度のロモソズマブがいずれの細胞の増殖にも影響を与えないことを確認した。次に形質の評価として、10mg/mlのロモソズマブによりいずれの細胞のE-カドへリン, N-カドヘリンの発現も影響されないことを確認した。CBA assayによるサイトカインの検討では、トリプルネガティブ乳癌細胞MDA-MB-231においてIL-6の誘導が増強される可能性が示唆され、その意義についてはさらなる検討が必要と考えられたが、他に悪性度の増大を示唆する反応は認められなかった。 以上より、ホルモン療法中の乳癌患者の骨粗しょう症治療に抗スクレロスチン抗体を用いることを躊躇する根拠はないと結論づけた。現在、学会ならびに論文発表の準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新規治療薬の候補である抗スクレロスチン抗体ロモソズマブの乳癌患者に投与することの安全性について基礎的研究結果が得られる前より臨床試験の準備は進めていて、実験結果が出た令和3(2021)年度前半早々には臨床試験を開始できた。しかし、ちょうど新型コロナ感染症蔓延のため新規乳癌症例が減少し、症例登録ののびが悪く、臨床試験の進捗状況が予定を大きく下回っている。また、学会発表と論文発表についてもコロナ禍の影響を受け次年度に延期されている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの抗スクレロスチン抗体ロモソズマブが乳癌細胞の悪性度を増強させる可能性が少ないことを確認できたことより、骨折リスクの高い骨粗鬆症を有する閉経後ホルモン感受性乳癌女性に対して術後補助ホルモン療法と同時にロモゾズマブを1年間投与する臨床試験を開始しているので、今後、この臨床試験の症例登録とデータ集積をすみやかに進めて行く予定である。 また、基礎研究の成果の学会発表が予定されていて、論文の作成と発表を進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
本年度前半に基礎研究が予想以上に順調に結論が得られたため、実験のための追加の支出が不要になった。また、コロナ禍の影響があり学会発表ができず、論文発表にも繋げられなかった。同様にコロナ禍の影響で症例登録が進まず、臨床試験の進捗が不良であったため支出が抑えられてしまった。 次年度としては、進捗が遅延している臨床試験を促進させて実施することと遅れている基礎研究の学会ならびに論文発表を実施する計画である。
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