2021 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析を用いた非小細胞肺癌のオシメルチニブ耐性機序の解明と治療法の開発
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20K07665
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
窪田 大介 順天堂大学, 医学部, 助教 (70638197)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 肺腺癌 / 分子標的薬 / 薬剤耐性 / プロテオーム / オシメルチニブ |
Outline of Annual Research Achievements |
肺がんは我が国において、がんによる死因の1位であり、今後さらなる増加が予測されている。EGFR(上皮成長因子受容体)の遺伝子変異は、進行非小細胞肺癌 の3-4割にみられており、それらの症例に対してはエルロチニブをはじめとするEGFR阻害薬が有効とされる。しかし、多くの症例では治療開始から1年程度で薬剤 耐性を生じ、病勢増悪を認める。その耐性機序のおよそ半数がEGFRのT790M変異であることが判明し、その耐性変異に対しても有効なオシメルチニブが臨床的に 使用されるようになった。しかしオシメルチニブに対し更なる耐性が出現し、全てのEGFR阻害薬の効果がなくなることが報告され、このオシメルチニブに対する 耐性機序の解明および新規治療方針の確立が急務である。本研究では、オシメルチニブの薬剤耐性に関わる分子機構をプロテオーム解析により網羅的に解析し、オシメルチニブ耐性機序の解明および新規治療標的の探索を目指すものである。昨年度に肺腺癌の臨床検体を用いて、タンパク質の発現解析を行った。臨床的にオシメルチニブが奏功した10症例と、治療抵抗性であった10症例を対象に腫瘍凍結検体よりタンパク質を抽出し、質量分析器によりタンパク質の発現解析を行った。タンパク質発現については、特に薬剤耐性に関わるタンパク質を中心に統計処理解析を行い、オシメルチニブ耐性にかかわる複数のタンパク質候補を同定した。本年度は、同定した遺伝子・タンパク質に対して、プラスミドを作成し、肺がん細胞株を用いて、恒常的に高発現・または発現抑制させた細胞株モデルを作成した。今後は樹立した細胞株はウェスタンブロット法にてタンパク質レベルでの発現変動を確認した後に、薬剤奏効性の評価を行なっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、プロテオーム解析を用いてオシメルチニブ耐性に関わるタンパク質を同定し、in vitroの機能解析による検証を行った上、オシメルチニブ奏効性予測バイオマーカーおよび新規治療標的としての有用性を検討する。令和2年度は、当初の計画どおり、オシメルチニブによる治療を施行した症例の臨床検体を用いてプロテオーム解析を行った。オシメルチニブに奏効性であった 症例(10症例)・抵抗性であった症例(10症例)の臨床検体を用いてレーザーマイクロダイセクションにより、腫瘍部分を切り出し、タンパク質を抽出した。抽 出したタンパク質は、質量分析計を用いて、タンパク質発現プロファイルを作成した。2群間の発現プロファイルを比較し、統計処理により、オシメルチニブ耐 性に関わるタンパク質を同定した。令和3年度は、同定した遺伝子・タンパク質に対して、プラスミドを作成し、肺がん細胞株を用いて、恒常的に高発現・または発現抑制させた細胞株モデルを作成した。細胞モデルの作成にあたっては、遺伝子特異的なプライマーを用いて、クローニングにより作成した。作成したプラスミドは、レンチウィルスベクターにポリブレン法を用いてトランスダクションし、その後、肺がん細胞株に感染させた。樹立した細胞株はウェスタンブロット法にてタンパク質レベルでの発現変動を確認した後に、薬剤奏効性の評価を行なっていく。現在までの進捗状況としては、オシメルチニブ耐性にかかわるタンパク質候補の複数の同定し、その細胞株モデルの作成が完了しており、おおむね順調に進展していると考える。本年度の研究成果をもとに、次年度以降は、細胞株を用いて薬剤耐性メカニズムの機能解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、オシメルチニブの薬剤耐性に関わる分子機構をプロテオーム解析により網羅的に解析し、オシメルチニブ耐性機序の解明および新規治療標的の探索 を目指すものである。プロテーオーム解析を用いて、臨床検体のタンパク質発現解析を行い、オシメルチニブ耐性に関わるタンパク質を複数同定した。本年度は候補となったタンパク質について、in vitroの機能解析を中心に行っている。具体的には、同定したタンパク質のプラスミドをGateWayシステ ムを用いてレンチウィルスベクターへの組み込みを行い、EGFR変異を有するNSCLS細胞株(PC9・HCC827・H1975)を用いて、恒常発現プラスミド強制発現モデル を作成した。発現が低下しているタンパク質に対してはShRNAを利用した遺伝子ノックダウンモデルを作成した。今後はこれらの細胞株を用いてオシメルチニブ耐性を 始め、細胞増殖、アポトーシスなどの機能を解析を進めていく予定である。さらにオシメルチニブ耐性の細胞株に対して、どのような薬剤が有用であるかのチロ シンキナーゼを中心に、新規治療標的としての可能性を検討する。また、追加の臨床検体が集積、使用可能であれば、発現解析を追加して行い、薬剤奏効性バイ オマーカーとしての有用性の検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、候補遺伝子の細胞株モデルを作成した。細胞株の作成には、クローニングによりプラスミドを作成し、Gatewayシステムを用いてレンチウィルスベクターへの組み込んだ。肺がん細胞株をレンチウィルスに感染させ、細胞モデルを樹立した。本年度は主にこれらのクローニング、細胞株、培養実験消耗品に予算を用いた。既存の物品を使用したこともあり、当初の予定よりも予算を抑えて実験を遂行可能であった。使用しなかった予算については、次年度以降の機能解析やドラッグスクリーニングに関わる消耗品に使用する予定である。
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