2021 Fiscal Year Research-status Report
がん代謝物に基づくスタチン適応がんの分類と微小腫瘍環境におけるスタチンの影響解析
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20K07666
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
割田 友子 関西学院大学, 生命環境学部, 講師 (00753112)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 清 関西学院大学, 生命環境学部, 教授 (30201974)
割田 克彦 鳥取大学, 農学部, 准教授 (40452669)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん細胞 / 制がん効果 / ヒドロキシメチルグルタリルCoA / HMGCR分解誘導剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、コレステロール合成に関与する遺伝子および低分子Gタンパクのプレニル化に関与する遺伝子に焦点を当て、スタチン耐性がん細胞および感受性がん細胞におけるスタチン処置前後の遺伝子発現動態を解析した。HMG-CoA合成酵素をコードするHMGCS1は、スタチン耐性がん細胞および感受性がん細胞いずれにおいても、スタチン処置により上方制御された。スタチンの標的であるHMGCRはスタチン感受性がん細胞で有意に上方制御され、耐性がん細胞では有意ではないが上昇傾向を示した。ゲラニルゲラニル二リン酸合成酵素をコードするGGPS1は、スタチン耐性がん細胞および感受性がん細胞ともに、スタチン処置による変化はみられなかった。すなわち、HMGCS1、HMGCRおよびGGPS1は、スタチン処置に対していずれの細胞も同じ傾向を示したため、スタチンの感受性を決める責任因子とは考えにくいものと推測された。 一方、スタチンを処置した細胞では、HMGCRタンパクのユビキチン化が阻害され、プロテアソーム系による分解を免れることが知られている。そして、このユビキチン化阻害により引き起こされたHMGCRタンパクの細胞内蓄積がスタチンの制がん効果を弱める一因であると考えられる。そこで、スタチンとHMGCRタンパク分解誘導剤との併用による制がん効果の変化を解析した。その結果、アトルバスタチンとHMGCRタンパク分解誘導剤との併用投与は、アトルバスタチン単独よりも細胞増殖の抑制効果がより高くなることが示された。HMGCRタンパク分解誘導剤は、スタチン処置により上方制御されたHMGCRの分解を促進することで、スタチンが効かない耐性がん細胞のスタチン感受性を数倍に高め、がん細胞の増殖抑制に有効である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スタチンとHMGCRタンパク分解誘導剤との併用により、スタチン耐性がん細胞がスタチンに対し感受性を示すことが明らかとなった。これはスタチンの制がん効果を高める糸口につながる知見であると考えられ、本研究はおおむね順調に進捗しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果は、肺がん由来のスタチン耐性がん細胞およびスタチン感受性がん細胞を用いて得られたものである。今後は、前立腺がんやメラノーマなど、他のがん細胞種においても、HMGCRタンパク分解誘導剤がスタチンの制がん効果を増強するのか検証し、結果の普遍性を検証していく。 また、本研究を遂行していく過程で、RT-qPCRにおけるターゲット遺伝子発現の補正に用いる内部標準遺伝子がスタチン処置により発現変動することが明らかとなってきた。今後は、これまでに知られている15種類の内部標準遺伝子を用いて、スタチンががん細胞の遺伝子発現に及ぼす影響解析に最もふさわしい内部標準遺伝子を検討し、報告していく予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に、ELISAを行うための、ウォッシャー購入に充てる予定であったが、Western blottingの結果の再現性を得るのに時間を要したため、ELISAを行うまでに至らなかった。そのため、未使用額が生じた。未使用額は、予定通りウォッシャーの購入に充てることとしたい。
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