2021 Fiscal Year Research-status Report
PD-1治療抵抗性の克服と副作用発現を制御可能ながん血管標的治療法の開発
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20K07685
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
野村 鉄也 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (40582854)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TEC / 免疫抗体ライブラリ / パンニング |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、腫瘍血管内皮細胞(TEC)の特性を有するin vitroTECモデルを構築しマウスに免疫することで、TECモデルに存在する膜タンパク質に対するありとあらゆる抗体を含む一本鎖免疫抗体ライブラリの構築に成功した。そこで当該年度では、この免疫抗体ライブラリの中からTECに対して選択的に結合する抗体を単離・創出するために、ファージディスプレイ法を駆使してTECモデルとの結合親和性を利用したパンニングと呼ばれる手法により研究を実施した。よりTECモデルに対する結合選択性に優れた抗体を創出するために、構築したライブラリをあらかじめ正常血管内皮細胞(EC)へと結合させたのちに、結合しない抗体ファージをTECモデルに作用した。その結果、パンニングを3回繰り返し行うことで、TECに強く結合する一本鎖抗体ファージの増加が確認できた。さらにモノクローン化後の各抗体クローンに関してELISA法を駆使して結合特性を評価したところ、TECモデルに対してより選択的に結合する抗体クローンを2種類獲得することに成功した。また、これら2種類の一本鎖抗体クローンに関してファージを用いた免疫染色を行ったところ、EC表面には結合せずTECに強く結合する抗体であることが明らかとなった。さらに、ヒト大腸がん組織を用いた免疫染色の結果からも腫瘍血管に結合特異性を有することも明らかにした。一方でin vivoへの投与による抗腫瘍効果を検討するにあたっては、一本鎖抗体の状態ではIgG抗体と比較してその結合性の低さが問題になると予想される。そこで、哺乳類細胞であるCHO細胞を用いてIgG抗体のFc領域と一本鎖抗体を融合したキメラ抗体の創出を試み、発現・精製することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度のTEC免疫抗体ライブラリの構築成功に引き続いて、当該年度は作製したTEC免疫抗体ライブラリの中から特異抗体の創出を試みたが、TEC選択的な抗体クローンを創出するためにあらかじめECに対して結合する抗体を除去するなどの工夫を行った関係で、予想よりも順調にTEC特異的な抗体を創出することに成功した。また、一本鎖抗体の結合力向上を目指したFc領域との融合タンパク質の発現にも成功し、次年度への足掛かりとすることができた。さらに次年度のin vivo実験のための予備検討として、使用するがんであるCT26腫瘍担がんマウスに対してPD-1抗体投与を行ったところ、抗体単独投与では抗腫瘍効果を発揮しないことを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度において発現を確認した抗TEC一本鎖抗体のFc融合タンパク質の詳細な結合特性の解析および結合力の評価を行う。さらに、PD-1抗体による治療に対する抵抗性を示すCT26担がんモデルマウスを用いて、腫瘍増殖抑制効果ならびに血管新生阻害作用の評価を行う。
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Causes of Carryover |
当該年度において、免疫抗体ライブラリからのTEC抗体の単離・創出が当初の予定よりも順調に進んだため、細胞用培地や大腸菌関連試薬の購入に必要となる経費に余りが生じた。余った金額に関しては、次年度動物実験を行う際の動物購入費やFc融合タンパク質の精製に関わる消耗品への費用にあてる予定である。
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Research Products
(6 results)