2021 Fiscal Year Research-status Report
術前の段階で術後予後を予測する膵癌予後予測マーカーの臨床応用
Project/Area Number |
20K07699
|
Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
小笠原 光成 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 助教 (10605215)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷内 恵介 高知大学, 教育研究部医療学系臨床医学部門, 准教授 (50626869)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 予後予測マーカー / 膵癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
独自の基礎研究により膵癌細胞の浸潤・転移に関わるRUVBL1とPRDX1を同定した。現在、手術前に採取された膵癌生検組織を免疫組織染色することにより、RUVBL1とPRDX1の予後解析を行う臨床試験を実施している。1年生存率の予後解析を終了し、RUVBL1とPRDX1の両方が高発現している症例では臨床ステージ分類に基づく予測よりも高い精度で手術前の段階で術後予後を正確に予測できた。本研究では、①臨床試験を継続して実施して2022年度に予後解析を終了する、②RUVBL1とPRDX1をノックダウンしたヒト膵癌細胞株をマウス膵臓に移植したモデルマウスを用いてRUVBL1とPRDX1がマウスの予後に関わることを示すin vivo実験データを得ることを目的とする。本研究の成果により、術前化学療法の症例を絞り込むバイオマーカーとして予後予測マーカーを臨床応用することを目指している。 2021年度に実施した研究成果については、後ろ向き臨床試験(UMIN000032835)においてRUVBL1とPRDX1の組み合わせが、臨床病期に基づく予測よりも高い精度で術前の段階で術後予後を正確に予測できるかを明確にすることができた。手術適応である膵癌25症例を対象とし、手術前にEUS-FNAにより採取した膵癌生検組織を用いて評価を行った。術前の段階で術後の予後を正確に予測できる膵癌の予後予測マーカーの組み合わせを同定することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
RUVBL1とPRDX1の組み合わせが、臨床病期に基づく予測よりも高い精度で術前の段階で術後予後を正確に予測できるかを明確にすることを目的とした後ろ向き臨床試験(UMIN000032835)を計画通りに実施して終了することができた。手術適応である膵癌25症例を対象とし、手術前にEUS-FNAにより採取した膵癌生検組織を用いた。それぞれの抗体を用いた免疫組織染色の結果を、染色の強さと範囲によりスコア化を行った。Kaplan-Meier生存曲線、log rank testによる1年生存率および2年生存率の予後解析を終了した。RUVBL1とPRDX1の両方が高発現である群では低発現群に比べて統計学的に有意に予後不良であり、術前の段階で正確な予後を予測し得ることが示された。臨床病期を調整した多変量cox比例ハザードモデルを用いた解析では、RUVBL1とPRDX1の両方が高発現の症例の予後は統計的に有意に不良であった。EUS-FNAにより採取した膵癌組織を用いた場合、RUVBL1とPRDX1の組み合わせは手術を受けたにもかかわらず予後不良であった症例を1年生存率と2年生存率の両方において正確に予測できていた。
|
Strategy for Future Research Activity |
RUVBL1とPRDX1の組み合わせが膵癌の予後に関わるかをin vivo実験により解析する。 RUVBL1とPRDX1をノックダウンするために、RNA干渉の一つであるsmall interfering RNA(siRNA)を発現するベクターをヒト膵癌細胞株PANC-1に遺伝子導入する。RUVBL1とPRDX1を標的とするそれぞれのsiRNAを組み込んだウイルスベクターを用いる。RUVBL1に対するsiRNAとPRDX1に対するsiRNAの両方を安定的に発現するPANC-1細胞由来のクローン細胞を樹立する。モデルマウスは、既に実験手法を確立しているヒト膵癌浸潤・転移モデルマウスを用いる(Cancer Res 2011;71:895-905, Oncotarget 2014;5:6832-45)。RUVBL1とPRDX1の両方を発現抑制したPANC-1細胞とコントロール細胞を各群10匹のヌードマウスの膵臓に移植する。移植後12週目までの生命予後および全身状態の変化を観察する。RUVBL1とPRDX1をノックダウンしたPANC-1細胞を移植した群において、スクランブルコントロール群に比較して予後が延長したかを解析する。また、後腹膜浸潤、腹膜播種および肺と肝臓への遠隔転移の程度を病理組織学的に検討し、RUVBL1とPRDX1をノックダウンしたPANC-1細胞を移植した群において浸潤・転移抑制効果の有無を明確にする。RUVBL1とPRDX1の組み合わせは手術を受けたにもかかわらず予後不良であった症例を1年生存率と2年生存率の両方において正確に予測できていた機序について解析する。
|
Causes of Carryover |
順調に臨床試験を進めることができ、2021年度に試験を終了することができた。多くの予算を計上する予定であるin vivo実験を2022年度に実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)