2020 Fiscal Year Research-status Report
不規則再生肝細胞に着目した新規肝癌バイオマーカーと創薬ターゲットの開発
Project/Area Number |
20K07706
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山崎 元美 日本大学, 医学部, 研究員 (40376794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 光彦 日本大学, 医学部, 教授 (50191060)
黒田 和道 日本大学, 医学部, 研究員 (50215109)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不規則再生肝細胞 / 肝癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、不規則再生細胞に着目して絞り込んだ肝癌発症候補遺伝子が慢性肝炎から肝癌までの新たなバイオマーカーや治療標的となりうるかを明らかにすることである。すでに、肝癌手術標本の癌部と非癌部において、LMDを用いたRNA-seqの結果から24個の肝癌発症候補遺伝子を同定し、その中から3つの肝癌発症候補遺伝子が臨床データ(血液データ、組織所見、予後や累積再発率など) と相関があることを見いだしている。既存の研究とは異なる視点から絞り込んだ24個の肝癌発症候補遺伝子の発現を慢性肝炎の肝生検組織で検討し、慢性肝炎から肝癌に進行するものと、肝癌に進行しないものとを区別出来るバイオマーカーとしての可能性について検討する。同時に、侵襲性の少ない検体として血清あるいは血清中のエクソソームを用いたELISA系を確立し、早期診断あるいは予後予測バイオマーカーとしての可能性を検討する。 2020年度は、肝生検組織での肝癌発症候補遺伝子の発現検討として、新たに慢性肝炎の肝生検組織20検体からRNA抽出後、cDNAを合成した。すでにcDNA合成まで行ったものと合わせて総数100検体について、qPCR(SYBR)によるすでに絞り込んでいる24個の肝癌発症候補遺伝子ついて、発現量と臨床データ(血液データ、組織所見、予後や累積再発率など)で相関のある肝癌発症候補遺伝子の発現を検討した。 血清Exosomeの分離と肝癌発症候補遺伝子の発現検討準備として、慢性肝炎患者の血清からExosomeを抽出方法を検討し、一部の検体からRNA抽出後、cDNA合成を行なった。 また、肝癌発症候補遺伝子の局在の発現検討の準備段階として、絞り込んだ遺伝子の発現を肝癌手術切除標本を用いて免疫組織化学染色の条件検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、 肝生検組織での肝癌発症候補遺伝子の発現検討として、新たに慢性肝炎の肝生検組織20検体からフェノール・クロロホルム法でRNA抽出後にカラム精製を行い、cDNAを合成した。すでにcDNA合成まで行ったものと合わせて総数100検体について、qPCR(SYBR)を行い、すでに絞り込んでいる24個の肝癌発症候補遺伝子のうち、タンパクレベルで解析可能な12個の遺伝子について、遺伝子の発現量と臨床データ(血液データ、組織所見、予後や累積再発率など)で相関のある肝癌発症候補遺伝子の発現を検討した。 さらに、血清中Exosomeにおける肝癌発症候補遺伝子の発現検討準備として、慢性肝炎患者の血清からExosomeの分離方法を検討した。さらに、慢性肝炎患者血清10検体からExosomeを分離し、RNA抽出後、cDNA合成を行なった。 また、本年度の研究結果から得られた臨床データと相関のある肝癌発症候補遺伝子の局在の発現検討の準備段階として、絞り込んだ遺伝子の発現を肝癌手術切除標本を用いて3つの肝癌発症候補遺伝子について、免疫組織化学染色の条件検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2021年度は、2020年度に引き続き、すでに絞り込んでいる24個の肝癌発症候補遺伝子の残り12個の遺伝子について、遺伝子の発現量と臨床データ(血液データ、組織所見、予後や累積再発率など)で相関のある肝癌発症候補遺伝子の発現を検討する予定である。 2.2020年度に検討した12遺伝子と合わせて、24遺伝子について検討を行い、さらに有力な肝癌発症候補遺伝子を絞り込む。絞り込んだ遺伝子について、肝癌セルラインを用いて、siRNAで遺伝子およびタンパクをノックダウンすることで、細胞増殖能やタンパク発現にどのような変化が起こるか検討する。同時に、経時的変化での遺伝子網羅的解析を次世代シークエンスで行い、ヒートマップを作成し、肝癌発症候補遺伝子のネットワークについても検討を行う予定である。 3.絞り込んだ遺伝子の中から、タンパクレベルで解析可能な遺伝子について、患者血清を用いたELISA系を確立する予定である。 4.2020年度に条件検討を行った免疫組織化学染色を肝癌手術検体を用いて染色を行い、非癌部・癌部・非癌部不規則再生細胞での発現を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度予定していた研究は概ね順調に進行しており、2021年度に予定していたsiRNAの予備実験を行う予定であったが、購入予定であったsiRNAの国内在庫が無く、世界的なCOVID-19の感染蔓延による航空便の減便で納期が間に合わず、次年度に購入することにした。 また、プラスチック消耗品(フィルター付きチップ、ピペット、PCRプレートなど)の在庫不足により、購入が出来なかったため、次年度への繰り越しが生じた。
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