2020 Fiscal Year Research-status Report
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20K07707
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Research Institution | Tokoha University |
Principal Investigator |
須藤 遙 常葉大学, 健康科学部, 准教授 (20372980)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大腸がん / 微小管 / 体液性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
該当年度では、計画の②に集中した実験を行った。培養細胞として、ラット線維芽細胞、ヒト線維芽細胞、ヒト大腸がん細胞などを用い、まずケトン体添加に対する反応を調べた。その結果、すべての細胞で、微小管のアセチル化亢進作用があることを認めた。この反応は、アセチル化に特有のものであった。なぜなら、他のチュブリン翻訳後修飾については、アセト酢酸と、βヒドロキシ酪酸では結果に相違を生じたからである。パルミチン酸についての実験では、大腸がん細胞で有意な微小管アセチル化増加を認めた。この時、タウのリン酸化についても調べ、S396、T153、S262の3か所のリン酸化に関し、T153のみで有意なリン酸化増加を認めた。さらにケトン体を加えるとこれらのリン酸化を示すウェスタンブロットのバンドは、増加したものも含み、全て減少した。終末糖化産物の実験では、BSAを実験的に糖化した製品を購入し、大腸がん細胞に対し投与、反応を調べた。その結果、10、50 μg/mLでは対照に比してチュブリンアセチル化は減るが、300、1000μg/mLではやや増加するという複雑な結果であった。高血糖を模した、25 mM のグルコースでの実験では、チュブリンアセチル化については、同じ浸透圧ストレスとなる塩化ナトリウム以下の効果しか認められなかった。この結果は、自らの浸透圧ストレスを高濃度のグルコースが何らかのメカニズムによってキャンセルしている可能性をも示している。しかし、グルコースによるチュブリンアセチル化増加は、傾向にとどまり、有意ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症のため、研究以外の業務が質的に変化する必要があった。これに対応するためには、研究へのエフォートを下げるしかなく、その結果若干遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
該当年度の研究結果においてケトン体のもつ微小管アセチル化効果が明らかになった。今後はこの物質に焦点を置き、発がんとの関係の解析を、当初の計画になるべく沿うように行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
染色体解析には、培養細胞をメタフェーズで展開する必要がある。方法の確立していない細胞でこれを行うには、多くの試行錯誤と大量の時間が必要となる。この過程を大きく前進させる方法として展開装置の採用がある。当該年度は、展開装置「HANABI」購入を予定していた。しかし、予期せぬコロナ禍の中で、業者との交渉がうまく進行できなかった。さらに、展開後の解析装置がなければ、展開装置購入は意味を失う。解析装置について吟味した結果、ソフトウェアなどに関し、一部メーカーを変更する必要が生じることが判明した。このように、該当年度の前半期は展開装置について業者との交渉が難航、後期には、解析装置についてのさらなる経費必要性とその解決策の模索に時間が投入された。その結果、該当年度には展開装置購入はできなかった。翌年度では、まずこの染色体解析装置のソフトウェアの問題を解決し、展開装置購入を予定している。B-Aの経費以外の実験計画は大きく変更はない。
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Research Products
(1 results)