2020 Fiscal Year Research-status Report
神経発火パタンがつくる軌道構造による領野間通信機序の解明
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20K07716
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
栗川 知己 関西医科大学, 医学部, 助教 (20741333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半田 高史 広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (40567335)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 領野間通信 / 抑制性細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、研究計画に従い、神経系の領野間の通信のメカニズムの解析を、主にモデル構築を通して行った。そのために、異なる3種の抑制性細胞モデルをイジケビッチニューロンモデルを用いて構成し、それらを興奮性細胞モデルと組み合わせることで、詳細な神経回路モデルを構築した。このモデルを用いて、本研究のために必要な挙動、すなわち領野間の神経活動のコヒーレンスが動的に変化する状態、がどのように生成されるのかを調べた。特に、抑制性細胞と興奮性細胞の結合強度・結合密度に着目することで、解析を行った。その結果、強度が高すぎると、一つの状態のコヒーレンスが一方的に強くなる、あるいは、ネットワーク間ではなくネットワーク内の振動が強くなりすぎることにより、適切に動的に変化するコヒーレンス状態が生成されないことを、見出しつつある。現在これらの知見を、もう少し広いパラメータ領域での探索とニューロン数を増やすことで、より精度をあげて論文としてまとめつつある段階である。 また、データによる解析と組み合わせるアプローチもすすめた。今回は、海馬と内側嗅内皮質間の情報通信のモデルを構築し、神経修飾物質(ここではアセチルコリンを想定している)が、ワーキングメモリ課題遂行中に適切に変化することで、領野間の通信を制御している仮説を提唱した。またモデルの結果を海馬の実験データで確認することができた。この結果はCerebral cortexに受理され出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
モデルの挙動が、当初の想定より複雑であり、パラメータの依存性がクリアに観察されない事があった。また、コロナ禍という想定されていない事由により、共同研究者との議論や会議などが著しく阻害された事も進捗にネガティブな影響を及ぼした。 ただし、年度後半からは、ある程度モデルの挙動のパラメータ依存性にも(上記実績の概要にもあるように)見通しがつきつつあり、進捗の遅れとしては大きくないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記モデルの挙動解析の完成、論文執筆とともに、研究 分担者である半田氏が測定しているデータの解析に取り組む。 特に、研究計画にあるように、軌道構造が領野間(本研究の場合具体的には、運動野と基底部)の通信にどのような役割を果たしているのかを解析する。 また、近年注目されている神経活動の幾何的な構造の情報処理における役割の観点からもデータ解析を進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、海外学会国内学会ともに出張ができず旅費の支出がほとんどなかったため。 繰越分の使用については、本年度の国内外の学会出張に当てる予定であるが、コロナ禍の状況に応じて、さらに来年度に繰越も検討する。
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Research Products
(3 results)