2020 Fiscal Year Research-status Report
Dynamic information representation of prefrontal neurons
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20K07726
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
坂本 一寛 東北医科薬科大学, 医学部, 准教授 (80261569)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サル / 前頭前野 / 神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目標は、行動計画策定に関係する前頭前野神経細胞活動の動的情報表現を解明することである。具体的には、形操作課題遂行中のサル外側前頭前野の神経細胞活動および局所場電位(local field potential, 以下LFP)を多重電極を用いて多点同時記録し、その課題依存性変化を解析することを基盤とする。形操作課題とは以下の課題である:画面にサンプル図形が提示され、遅延期間後、テスト図形が提示される。その後、Go信号が与えられると、サルは握っているレバーを動かしテスト図形を1回操作する。1回の操作で、左または右方向に45度刻みの回転、ないしは2倍に拡大または半分に縮小、という4つのうち1つが許される。最短で2回の操作で正解にたどりつく。 令和2年度は、LFPの課題イベントに対応した変化を解析した。LFPの時間-周波数スペクトルを階層的にクラスター分析したところ、特にシータ領域と低ガンマ領域に特徴的なパターンが見られた。特にシータ領域では、外側前頭前野の腹側部と背側部がよく区別された。腹側部では、類似したLFPパターンのブロックが見られたのに対し、背側部では、異なるLFPパターンを持つ小さな部位や単一の部位が散在していた。これらの結果は、外側前頭前野内の機能分離、特に腹側部と背側部の間の機能分離が、LFPのタスクフェーズ依存の時間-周波数変調に基づいて特徴づけられることを示唆している。これらの結果は、日本神経科学学会で発表し(坂本、他.P-171)、また、Neuroscience Research誌に掲載された(Kazuhiro Sakamoto et al., vol.156 pp.41 - 49 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、形操作課題遂行中のサル外側前頭前野から記録したLFPを解析し、サンプル刺激提示前とテスト刺激提示前にシータ波が上昇することを示した(Sakamoto et al., 2020)。今年度は、シータ波がどのような課題条件や行動の変化を反映するのかを検討する。これまで予備的には、ウェーブレット解析を用いてLFPを時間-周波数展開し、その振幅変動について重回帰分析を行なってきた。その結果、サンプル図形提示前のシータ波は課題ブロックの内容や前試行の結果を反映する一方、テスト図形提示前のシータ波はこれから行う行動を反映することが示唆された。しかしながら、LFPは試行ごとの変動が大きく、このような描像を統計的に確立するには至っていない。そこで現在、単なるウェーブレットスペクトルの振幅ではなく、ほかの側面に情報が載っている可能性を探るため、位相同期指標(phase lock index)を用いた解析と並行して、 LFP波形中の特定周波数の振幅上昇が一過的・間欠的に見られること着目し(Murthy & Fetz, 1992)、解析を進めている。具体的には、シータ波が一過性に上昇する期間を振動エポックとして定義し、エポックの出現タイミング、エポック出現頻度、エポック内振動回数、エポック振幅等、多元的に解析する。これらの指標が試行情報を反映する程度にはばらつきがあり、その指標が最も有効かを明らかにすることは重要であるが、それとあわせて、これら全ての指標を適切に組み合わせることにより、1試行のLFPから可能な限り多くの情報を得ることも検討する。解析結果は、第44回 日本神経科学大会で発表し、Frontiers in Human Neuroscience誌に投稿予定である(既に要旨を投稿)。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記、シータ波の解析結果を受けてそれと同様に、ガンマ波やベータ波等、他の周波数成分の解析を行う。またそれと並行して、LFPと同時記録した神経細胞の発火活動の解析を行う。具体的には、以前行った行動順序生成課題・経路計画課題の結果から予想される、これから行う要素行動、すなわち、これから行う形の拡大・縮小、右回転・左回転等を符号化する細胞を同定する。更に、これら細胞発火の発火揺らぎの程度や発火間の同期性も解析する。これらには発火頻度とはことなる情報が符号化されていることが以前の研究から明らかになっている(Sakamoto et al., 2008, 2013)。次に、現在進めているLFPと発火の関係を解析する。特に、海馬(O’Keefe, Recce, 1993)のみならず、大脳皮質においても知られている(Lee et al., 2005) シータ波と神経発火の位相関係に着目する。 このように、1つの電極記録点から得られた素神経信号からは、極めて多重な信号が得られる。本研究の仕上げとして、これら多重な信号と提示図形等の課題条件を入力とし、動物の行動、具体的には、形の操作手順を出力するデコーダーを構築する。1試行の神経信号からどの程度動物がこれから行う行動をデコードできるか、最もデコードできる情報の組み合わせ方はどのようなものかを検討する。このような試みは、第一次運動野等ではなく、高次連合野の神経活動の脳―機械インターフェースへの利用の基盤となると期待される。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会発表などが全てオンラインになったため、次年度使用額が生じた。今年度は、データ解析のための計算機やソフトウェアの更新を行う予定である。
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Research Products
(4 results)