2020 Fiscal Year Research-status Report
プリオン仮説に基づいた蛋白質モノマー間異常構造伝播の実証
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20K07737
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
小澤 大作 近畿大学, 医学部, 定時職員 (60554524)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | プリオン / ポリグルタミン蛋白質 / アミロイド / 伝播 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経変性疾患で起きる蛋白質の異常構造伝播に注目する。特に、蛋白質分子間での異常構造の伝播は、神経変性疾患の初期に起きる非常に重要な事象であり、治療・予防法の開発の上でも詳細な解明が待たれる。異常構造伝播機構においては、以前よりプリオン仮説が提唱されているが、未だに実証されていない未解決の課題である。本研究は、神経変性疾患の1つであるポリグルタミン病のポリグルタミン蛋白質をモデルとし、①プリオン仮説に基づいた蛋白質モノマー間での異常構造伝播の実証、②他の神経変性疾患関連蛋白質でのプリオン現象の実証、③異常構造伝播を阻害する化合物の探索を行う。本研究は、これまで未解決であったプリオン仮説を実証し、神経変性疾患で起きる共通の普遍的な現象と推測されているプリオン現象を解明し、それをターゲットとした創薬開発を目指すものである。 令和2年度では、以前の研究で得られたポリグルタミン蛋白質凝集を阻害する低分子化合物を基に、これら化合物の一部を構造展開し、凝集前に起きるポリグルタミン蛋白質の構造変化を阻害する化合物の探索を行った。具体的には、凝集阻害効果が大きかった2化合物について構造展開を行い、10種以上の誘導体を作製した。それら誘導体の一部の構造変化阻害効果を評価した。評価した誘導体の中で、阻害効果が上昇する誘導体は見つからなかったが、いずれの誘導体もポリグルタミン蛋白質の構造変化を阻害することが明らかになった。これら誘導体は次年度において、異常構造伝播についても阻害するか検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度では、2化合物の構造展開を進め、数種の誘導体のポリグルタミン蛋白質の構造変化阻害効果を確認できた。効果のある化合物については、異常構造伝播の阻害効果について評価する足場を作ることができたと考えているが、本年度は大阪大学から近畿大学への異動があり、実験ができない期間があったため予定通りに研究が進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
モデルポリグルタミン蛋白質(Thio-polyQ)を用いて、①プリオン仮説に基づいた蛋白質モノマー間での異常構造伝播の実証については、モノマー間で異常構造が伝播される際に、βシートThio-polyQモノマーとαヘリックスThio-polyQモノマーの相互作用が不可欠となるため、βシートモノマーとαヘリックスモノマーの蛋白質間相互作用を、それぞれ異なる蛍光ラベルを行ったモノマーを用いて蛍光共鳴エネルギー移動により検出する。また、分子架橋剤を用いて、相互作用した際に形成されるβシートモノマーとαヘリックスモノマーから成るダイマーを検出する。さらに、等温滴定型熱量計により、βシートモノマーとαへリックスモノマーの蛋白質間相互作用の熱変化を直接検出し、相互作用の駆動力を明らかにし、異常構造伝播の特性を見出す。 ②他の神経変性疾患関連蛋白質でのプリオン現象の実証については、αシヌクレインなどの他の神経変性疾患関連蛋白質でも、上記と同様のモノマー間での異常構造伝播が起きるか明らかにする。一部、異常構造モノマーが確認できている蛋白質を用いて、これらのモノマーが異常構造の伝播性を持つのかまた異常構造モノマーの形成が誘導されるか、Thio-polyQ研究から得られた知見を駆使し、濁度測定や円二色性測定、超遠心分析、ゲルろ過クロマトグラフィーにより明らかにする。 ③異常構造伝播を阻害する化合物の探索については、ポリグルタミン蛋白質の構造変化阻害効果が見られた化合物について、異常構造伝播阻害効果を評価する。
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Causes of Carryover |
令和2年度では、大阪大学から近畿大学への異動により一部実験が滞ったために、計上していた消耗品費の出費が減少し、次年度使用額が生じた。令和3年度では、ポリグルタミン蛋白質の異常構造伝播の試験管内実験に必要となる薬品やガラス・プラスチック器具の購入を予定している。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Arginine is a disease modifier of polyQ disease models that stabilizes polyQ protein conformation.2020
Author(s)
Minakawa E.N., Popiel H.A., Tada M., Takahashi T., Yamane H., Saitoh Y., Takahashi Y., Ozawa D., Takeda A., Takeuchi T., Okamoto Y., Yamamoto K., Suzuki M., Fujita H., Ito C., Yagihara H., Saito Y., Watase K., Adachi H., Katsuno M. Mochizuki H., Shiraki K., Sobue G., Toda T., Wada K., Onodera O., Nagai Y.
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Journal Title
Brain
Volume: 143
Pages: 1811-1825
DOI
Peer Reviewed
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