2023 Fiscal Year Research-status Report
神経変性疾患由来iPS細胞を用いたin vitro血液脳関門モデル構築と病態解析
Project/Area Number |
20K07741
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
野中 里紗 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (90614248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志賀 孝宏 順天堂大学, 大学院医学研究科, 特任助教 (50784378)
石川 景一 順天堂大学, 大学院医学研究科, 准教授 (90733973)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / iPS細胞 / 内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)は血液と中枢神経系との間の物質交換を制限するバリア機構であり、パーキンソン病などの難治性神経変性疾患の疾患発症に血液脳関門の破綻が関連するという知見が報告されている。本研究は、健常者ならびに神経変性疾患患者由来iPS細胞から分化誘導したBBB関連細胞を用いて、血液脳関門細胞モデルを確立・解析することを目的としたものである。 本年度は、健常由来および疾患由来のiPS細胞から分化誘導した内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト、神経細胞の各細胞特性の解析を行うことを予定していた。iPS細胞から内皮細胞への分化誘導は、これまでに複数の健常由来iPS細胞およびパーキンソン病疾患由来iPS細胞から分化誘導を行い、それらの株において、内皮細胞特異マーカーの発現を指標に内皮細胞分化を確認することが出来ている。ペリサイトへの分化誘導においても、健常由来iPS細胞およびパーキンソン病の疾患由来iPS細胞の複数株においても、ペリサイト特異マーカーの発現を確認することができている。また、iPS細胞からアストロサイトへの分化誘導は、培養期間の短縮に加え、誘導効率の改良を行っており、高効率にアストロサイトへの分化誘導が可能になっている。iPS細胞から神経細胞への分化誘導は、その誘導効率および特性についても解析を行っており、疾患領域特異の神経細胞への分化誘導が高効率に可能である。現在は、BBB関連細胞を用いた共培養モデルの構築に向けて検討を進めており、各種細胞の細胞間相互作用の解析を行うのと並行し、バリア機能や細胞透過性の評価等を行う予定でいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度に引き続き、血液脳関門を構成する主な細胞である内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト、神経細胞を健常・疾患由来iPS細胞から分化誘導を行い、細胞特性解析を中心に検討を行う予定であった。複数の健常由来iPS細胞および疾患由来iPS細胞から内皮細胞およびペリサイトへ分化誘導することができ、蛍光免疫染色にて内皮細胞マーカーの発現を指標に定性確認が可能であった。現在は、健常由来iPS細胞および疾患由来のiPS細胞から分化誘導した内皮細胞およびペリサイトの比較検討を進めている。また、iPS細胞からのアストロサイトへの分化誘導法も引き続き解析・検討を進めている。iPS細胞から神経細胞への分化誘導法は既に確立しており、疾患領域特異性を持った神経細胞を誘導することが可能である。共培養モデルの構築にあたり、誘導日数の違いが問題点の一つであるため、分化誘導日数の長い神経細胞を用いて、その前駆細胞での維持が可能であるか検討を行ったところ、本研究で使用している神経細胞分化誘導法は、神経幹細胞(神経前駆細胞)の段階で継代維持が可能であるが、長期に複数回継代を繰り返し行っても、領域特異性や神経幹細胞特性が維持されること、神経細胞への誘導効率にも影響がないという結果が得られている。しかし、昨年度に各種分化細胞を用いたtrans-endothelial electrical resistance (TEER)測定によるバリア機能の評価および細胞透過性の評価、トランスポーター、P糖タンパクの発現の検証・評価を予定していたが、現在、検討を進めているが評価までは至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、ひきつづき健常由来および疾患由来iPS細胞から内皮細胞、ペリサイト、アストロサイト、神経細胞の分化誘導した細胞を用いて、それぞれの細胞特性の解析を行う予定でいる。各種細胞の細胞間相互作用の解析も行う予定でおり、内皮細胞のタイトジャンクション蛋白 (claudin-5, occluding, ZO-1など) の発現評価、供給・排出輸送系トランスポーター(グルコーストランポーター(GLUT1)アミノ酸トランスポーターなど)、P糖タンパクの発現を指標とした免疫染色法およびWestern blot 法により検証・評価を行う。ペリサイト由来の微小環境タンパク質と内皮細胞のインテグリン受容体を介したシグナルの解析も進める予定でいる。ひきつづき、共培養モデルにむけて各種分化細胞を用いてtrans-endothelial electrical resistance (TEER)測定によるバリア機能の評価およびSodium fluorescein (Na-F) による細胞透過性の評価、供給・排出輸送系トランスポーター(グルコーストランスポーター(GLUT1)など)、P糖タンパクの発現およびそれら輸送能の評価をする。
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Causes of Carryover |
2023年度は、別業務の増加にて、計画していた実験を推進させる時間が限られていたので、延長を申請して、2024年度への繰り越しが発生した。2024年度は、予定している細胞特性の解析、分子間相互作用の解析を引き続き行うため、細胞培養試薬およびそれら解析・評価に必要な抗体やプライマー等の消耗品の購入が、引き続き必要になる。また、2024年度は共培養系の血液脳関門細胞モデルのバリア機能や細胞透過性の評価を予定している為、培養に必要なプラスチック消耗品や試薬の購入が必要になる。また、それら評価の為の試薬の購入を予定している。並行して、各種細胞の細胞間相互作用の解析も行う予定でおり、解析・評価に必要な抗体および試薬の購入する予定でいる。
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