2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K07746
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
坪井 美行 日本大学, 歯学部, 講師 (50246906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 正岳 日本大学, 歯学部, 教授 (10231896)
三枝 禎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (50277456)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 性差 / マウス / ミノサイクリン / Pioglitazone |
Outline of Annual Research Achievements |
舌痛症は難治性で、女性に好発することが知られているが、性差を考慮したモデル動物は開発されておらず、有効な治療法がない。本研究では、舌の体性感覚中枢情報処理機構について調べ、免疫機構の違いが神経障害モデルにおいて舌の感覚情報中枢処理機構に関わっているかを明らかにすることを目的とした。 オス、メスのICR系マウスを用いた。メスについては膣内の電気抵抗による性周期を確認し、ランダムに動物を選んだ。舌神経障害モデル動物は、Katagiriら(2012)の方法を参考に、全身麻酔下(2.5%イソフルラン)で、左の舌根部粘膜を切開し、舌神経を露出し、クレンメ(30 g)で30秒間圧迫して作成した。 機械刺激は、先端が平坦なプローブのピンチャーを用いて、舌の左側で先端より3mmの部分を刺激した(10 g/sec、cut off:110 g)。熱刺激(1°C/sec、 cut off: 60°C)は接触型熱刺激装置 (先端直径9 平方ミリメートル) を用いて左側舌を刺激した。刺激時の麻酔深度は、足をピンチ刺激した時に引っ込め反射が起こらないことを基準にした。3回の平均値を逃避閾値としたが、刺激間隔は5分以上とした。 神経障害術後3日目の動物を用いて、Microgliaの阻害剤であるミノサイクリン(3㎎/生理食塩水 100μL、10μL)またはT細胞上に在しIL-17Aの産生を抑制するPPAR2γのアゴニストPioglitazone(3㎎/DEMSO 100μL、10μL)大漕内へ注入し逃避閾値を測定し以下の結果を得た。オス、メスにおいては術後3日目にsham群と比べて有意に逃避閾値が小さくなった。オスにおいてはミノサイクリン投与群、メスにおいてはPioglitazone投与群において逃避閾値の低下が有意に抑制された。この結果は、三叉神経系での神経障害性疼痛機構において性差があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画予定では、令和3年度では、2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid(TNBS)を舌粘膜表面に投与することによる舌痛症のモデル動物を用いて、中枢神経系での感覚情報の処理機構に性差があるか、性差があればそれが免疫機能の違いにより発生するかを検索する予定であった。しかし、前年度からの継続の神経障害性モデル動物を使っての実験がコロナ感染防止策による大学への立ち入り等の問題で開始が遅れ、TNBSを使用したモデル動物での実験は行えなかった。さらには大学の動物飼育室の移転により動物実験の停止期間(令和4年、2-3月)があり、神経障害性モデル動物を使っての実験をまとめて、学会発表までしかできなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の最終目標であるストレスの要因を加え異常行動発現が増加するモデル動物を開発し、その動物で疼痛発現機構の解明を行う。ストレスは血中コルチコステロンの有意な増加が認められるチューブに動物を入れ拘束した後に28℃の温浴を3時間浸し、それを15日間続けるものとする(坂本ら 2015)。ストレス負荷群では16日目から全身麻酔下で舌に1分間の侵害刺激ではない40℃刺激を、1分刺激間隔をあけて10回繰り返す。刺激翌日はSC量を測定する。それぞれ21日目まで刺激と測定を繰り返す。21日目にミノサイクリンまたはPioglitazoneを延髄に投与し、逃避閾値を測定する。それらの結果より、逃避閾値がシャム(ストレスなし)群より増加していれば、舌痛症のモデル動物が確立されたと考え、ミノサイクリンまたはPioglitazoneを延髄硬膜内投与による逃避閾値の変化が記録できれば、microglia系、T細胞系どちらが疼痛発現機構に依存しているのかが解明できる予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ感染防止のため学会の参加がオンラインになり、旅費の支出が無かった。新校舎への移転に伴い動物飼育ができない期間があり、動物の購入費やELAISAキットの購入ができなかったため残金が生じた。 繰越金と令和4年度の助成金を合わせて、ストレスマーカーの血中コルチコステロンの定量解析やストレス下の動物でミノサイクリンやPioglitazoneの延髄硬膜外投与の効果を検索する実験を行う計画である。
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Research Products
(3 results)