2020 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞の興奮・抑制を調節するBRINPタンパク質の機能の解明
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20K07748
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
小林 三和子 松山大学, 薬学部, 准教授 (30396329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松岡 一郎 松山大学, 薬学部, 客員教員 (40157269)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | BRINP / 海馬 / マイクロアレイ / 細胞周期 |
Outline of Annual Research Achievements |
BRINP3-KOマウスおよび野生型マウスの海馬から抽出したRNAを用いたマイクロアレイ解析を行った。その結果,10261個の遺伝子のうちBRINP3-KOマウスでは野生型マウスと比較してコーディング領域のmRNAの発現が2倍以上増加していた遺伝子が73(0.71%),半分以下に減少していた遺伝子が58(0.57%)存在した。発現増加が見られた遺伝子の中に,細胞周期のG1からS期への移行を阻害するRb1があり,海馬でBRINP3タンパク質が細胞周期を進行させている可能性が考えられた。これまでBRINP1-KOマウスの歯状回顆粒細胞下層における神経新生が亢進することからBRINP1は細胞周期の進行を抑制すると考えられていた。BRINP1,2,3のそれぞれのmRNA発現パターンは海馬の中でも異なることからも,BRINPタンパク質が細胞周期の進行に与える影響については詳細な解析が必要と考えられる。 また,ミトコンドリアでPRKNのリン酸化を行うPINK1タンパク質をコードするPink1遺伝子の発現がBRINP3-KOマウスの海馬で減少していた。PINK1はPRKNと協働して質の低下したミトコンドリアの排除に関わり,Pink1は若年性パーキンソン病の原因遺伝子の1つであるため,BRINP3-KOマウスの行動異常にPink1の発現減少による神経変性が起こっている可能性が考えられた。 以上のように,マイクロアレイ解析によりこれまでにBRINP-KOマウスでみられた表現型や,BRINPタンパク質の強制発現により得られた結果を詳細に解析するための手がかりがいくつか得られた。今後,BRINP1-KOマウスにおいて,さらに海馬以外の前頭前野における同様の解析を行いBRINPファミリータンパク質の神経系における分子機能の解明につなげる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1)実験機器の故障による遅れ 昨年度はKOマウスの維持の際に必要な遺伝子タイピングに使用するサーマルサイクラーが経年劣化で故障したため予定外に新規購入することになり,使用できる予算が激減した。また,蛍光顕微鏡に接続していた白黒CCDカメラの故障も起こり,適切なタイミングで撮影を行うことができないことがあった。 2)動物実験施設の工事に伴うマウス繁殖の遅れ 利用している施設の空調設備更新工事の間SPF環境が維持できないため,維持していた動物を処分し新たに体外受精後に生まれたマウスの繁殖を再開した。維持し続けたマウスと違い,母マウスの育児放棄が多く,実験に用いるマウスを十分数得るところまでに至っていない。 3)COVID-19感染拡大に伴う影響 対面授業から遠隔授業に変更になったことに伴う授業準備にかかる時間が膨大になったこと,授業開始時期の遅れに伴い卒業研究発表会などの重要な行事や定期試験の日程が厳しくなったこと,薬学部共用試験などの対面で行わなければならない試験について感染対策を講じるために様々な仕事が増加し,忙殺された。 4)感染拡大に伴い,学生の出入りが制限された時期があったため研究が中断した時期があった。対面での学生指導も制限があり意思疎通が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1)BRINP-KOマウスの繁殖を進め,マイクロアレイ用のサンプルを採取して解析を行う。 2)タンパク質相互作用の解析実験において,強制発現用コンストラクトのタグを入れ替えたものを用いてBRINPタンパク質および相互作用する2種類のタンパク質の3者が共存するときの影響について解析を行う。 3)細胞内小胞輸送に関わる解析を行うための蛍光タグ付き強制発現用コンストラクトの作製および実験系の構築を行う。
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Causes of Carryover |
研究遂行が遅れていること,予定外の機器を購入しなければならなくなったこと,受託解析を依頼するには十分な残額ではなかったことなどの理由で,次年度以降の方が有効に活用できると考えたため。
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