2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of innovative treatment for multiple sclerosis based on control of neurodegeneration and inflammation by applying function of LOTUS
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20K07761
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 慶太 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (20773740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹内 英之 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30362213)
田中 章景 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (30378012)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | LOTUS / Nogo / Nogo受容体 / 多発性硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにNogo受容体の内在性アンタゴニストとして機能するLOTUSが、多発性硬化症の病勢増悪に一致してその発現の低下をきたしていること、またその結果、多発性硬化症患者において緩除に進行する機能障害の主たる原因と考えられている軸索変性を促進させることを明らかにしてきた。これに加え、神経機能分子のLOTUSが神経系の細胞だけでなく免疫細胞であるリンパ球においても作用し、炎症病態に関連すること、さらには抹消の免疫細胞だけでなく中枢神経系の免疫担当細胞であるミクログリアにも作用し、MSの重要な病態である中枢神経炎症にも係わる可能性を突き止めつつある。本研究では神経機能分子であるLOTUSが抹消のリンパ球へ作用して炎症性サイトカインの変動に係わっていることに加え、ミクログリアに対してもLOTUSが結合することまで突き止めた。 さらに、リンパ球、マイクログリアにはLOTUSのターゲット分子であるNogo受容体が発現しており、LOTUSの生理機能を発揮することが多数報告されているが、本研究でNogo受容体の欠損マウスを用いてLOTUSとNogo受容体の炎症病態に係わるこれら炎症に関連する細胞へ機能の解析を行ったところ、驚いたことに、Nogo受容体の欠損マウスにおいてもLOTUSの結合・生理活性を示唆する結果が得られた。すなわち、LOTUSはNogo受容体に対してだけではなく、別の分子に対してその機能を発揮し、炎症病態に大きく関与することが示唆された。我々はこの新たなLOTUSの作用分子の同定・解析を進めつつあり、興味深いことに、この新たなターゲット分子は炎症を増悪させる方向に機能している結果を得ており、これまでとは全く異なる治療ターゲットを見い出した。引き続きLOTUSを主軸としたMSの病態機序解明とこれまでにない画期的な治療法の開発を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リンパ球に加え、マイクログリアの初代培養を用いたLOTUSのBinding assayを行ったところ、マイクログリアに対してもLOTUSの非常に強い結合が明らかとなった。さらにリンパ球の初代培養にLOTUSを添加してその上清に含まれる炎症性サイトカインの変動を解析したところ、炎症性サイトカインの上昇が認められたことに加え、マイクログリアの初代培養にLOTUSを添加し解析した結果、IL-6等の病態に深く関連すると考えられる炎症性サイトカインの分泌が見られた。これらの現象はNogo受容体の欠損マウスにおいても同様の結果が得られており、我々のこれまでの研究結果と矛盾しないものであり、これまでに解析を進めている新たなターゲット分子がこれまでにない新たな多発性硬化症の病態解明・治療法開発につながる可能性を示している。このように、神経系と免疫系のインタラクションについてその機序の解明に向けた興味深い結果と新たな治療ターゲットを提示できる段階まで進捗しており、本研究は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
LOTUSがこの新たな治療ターゲット分子に作用することにより、炎症を増悪させる可能性が示唆される一方で、LOTUSは神経変性を抑制する効果を有することから、神経系においてはLOTUSの機能を維持し、免疫系ではLOTUSの作用を抑える必要がある。したがって、免疫細胞に発現している新たな治療ターゲット分子を制御する手法を検討する必要がある。現在、新たな治療ターゲット分子に対する阻害抗体の作成、またLOTUSの結合ドメインの解析を行い神経系にのみ強力に機能するあらたな化合物の作成を検討している。
そしてこれらの新たな治療法の効果について野生型、LOTUS過剰発現および欠損マウスを用いてEAEを誘導し、病勢評価および病理学的解析を行うことを予定している。またこれまで同様に神経系への作用を評価するため、順行性神経トレーサーBiotinylated Dextran Amine (BDA)やGAP43等の免疫染色を行い、細胞レベルにおいてLOTUSを用いた軸索再生治療の有効性を評価し、また炎症に係わる効果を確認するため、これらマウスのリンパ球等の初代培養によるサイトカインの変動を検討している。
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Causes of Carryover |
試薬を購入するためには端数であったため、次年度の研究費と合わせて試薬を購入することを予定している。
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Research Products
(1 results)