2021 Fiscal Year Research-status Report
タウタンパク質のリン酸化におけるATBF1機能解析
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20K07762
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
鄭 且均 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 准教授 (00464579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道川 誠 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (40270912)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / 糖尿病 / インスリン欠乏 / ATBF1 / タウタンパク質のリン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病はアルツハイマー病(AD)の危険因子であり、特に脳内のインスリン欠乏はタウタンパク質をリン酸化させ、認知機能障害を引き起こす。申請者らは、1)ADモデルマウスでストレプトゾトシン投与により1型糖尿病を誘発させ、脳内で変動する分子を2次元電気泳動-質量分析法で網羅的に解析した結果、転写因子であるATBF1の発現レベルが減少することを発見した。本研究の目的は、①インスリン欠乏によるATBF1発現減少メカニズムと、②タウタンパク質のリン酸化におけるATBF1の機能を明らかにすることである。昨年度までには、ATBF1発現はインスリンシグナルによって制御されることや、N2AP301L細胞にATBF1を過剰発現させるとタウタンパク質のリン酸化が亢進し、ATBF1をノックダウンすることでタウタンパク質のリン酸化が抑制されることを明らかにした。 本年度は、ATBF1によるタウタンパク質のリン酸化メカニズムを解明するため、①ラット由来の初代神経培養細胞およびN2AP301L細胞にATBF1を過剰発現またはノックダウンした後、タウタンパク質のリン酸化に関わる酵素(GSK3β、CDK5、JNKなど)およびタウタンパク質の脱リン酸化に関わる酵素(PP1、PP2Aなど)の発現変動を検討することや、②野生型マウスおよびATBF1(+/-)マウスにストレプトゾトシ(STZ)を投与することによるインスリン欠乏マウスを作成し、このマウスを解析することである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画は、1)ATBF1によるタウタンパク質のリン酸化メカニズムの解明と、2)野生型マウスおよびATBF1(+/-)マウスにストレプトゾトシ(STZ)を投与することでインスリン欠乏マウスを作成し、このマウスを解析することである。 1)ATBF1によるタウタンパク質のリン酸化メカニズムの解明:まず、この実験は計画通り行い、N2AP301L細胞にATBF1を過剰発現させると、タウタンパク質のリン酸化に関わる酵素であるERKおよびJNKの活性化が低下した。逆に、ラット由来の初代神経培養細胞およびN2AP301L細胞にATBF1をノックダウンするとERKおよびJNKの活性化が亢進した。この結果から、ATBF1の過剰な発現は、ERKおよびJNKの活性化を介してタウタンパク質のリン酸化を促進することが示唆された。 2)インスリン欠乏ATBF1(+/-)マウスの解析:この実験は、ATBF1(+/-)マウスは生まれてから3ヶ月齢で死亡することが多いため、サンプル数が十分に得られなかったため少し遅れている。しかし、胎生18日目のATBF1(+/-)胎児脳を解析したところ、野生型に比べてATBF1(+/-)マウス脳ではタウタンパク質のリン酸化の亢進や、ERKおよびJNKの活性化の亢進が見られた。この結果から、in vitro実験結果と同様に、in vivoにおいてもATBF1発現の減少はERKおよびJNKの活性化を介してタウタンパク質のリン酸化を促進することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)インスリン欠乏ATBF1(+/-)マウスの作成;野生型マウスおよびATBF1(+/-)マウスにストレプトゾトシ(STZ)を投与し、インスリン欠乏マウスを作成する。このマウスを用いて、①血糖値、②ELISA法を用いて血漿インスリンレベルの測定、③タウタンパク質のリン酸化をウェスタンブロティングで確認、④タウリン酸化に関わる酵素(GSK3β、CDK5、JNKなど)やタウタンパク質の脱リン酸化に関わる酵素(PP1、PP2Aなど)のリン酸化をウェスタンブロティングで確認する。 2)ATBF1(+/-)とAPP-KIマウスの交配マウス作成と解析;ATBF1(+/-)とAPP-KIマウスの交配マウスにSTZを投与し、4ヶ月後に、①血糖値、②ELISA法を用いて血漿インスリンレベルの測定、③認知機能テスト、④タウタンパク質のリン酸化、⑤細胞死やシナプス関連タンパク質の解析などを行う。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた、抗体および遺伝子導入試薬の購入費が少なく済んだため。また、ATBF1(+/-)マウスを用いて行う予定である実験が、このマウスが生後3ヶ月齢から死亡が見られ、実験が少し遅れたため。また、コロナの影響で学会参加費用が不要であった。
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