2021 Fiscal Year Research-status Report
Role of adenosine for analgesia induced by intramuscular injection of drugs
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20K07767
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
那須 輝顕 中部大学, 生命健康科学部, 助手 (30584180)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ストレス / パネキシン1 / ASIC3 / 甲状腺ホルモン / 筋性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1)繰り返し寒冷ストレス(以下RCSと略す)暴露による骨格筋のATP放出チャネルであるパネキシン1(以下Panx1と略す)の発現への影響、2)RCS暴露による脊髄後根神経節における痛み関連受容体分子の発現への影響、3)RCS暴露による血清甲状腺ホルモン濃度への影響について調べた。 1)RCS暴露による骨格筋Panx1の発現への影響をRT-PCR法で調べた。その結果、予想に反してPanx1の発現量が有意に低下している事を明らかにした。この事からATP放出能亢進は、Panx1発現量増大ではなく膜局在の変化や翻訳後修飾(リン酸化など)の違いによると考えられる。 2)RCS暴露による脊髄後根神経節における痛み関連受容体分子(ASIC3, TRPV1, アデノシン受容体)の発現への影響をRT-PCR法で調べた結果、ASIC3の発現が有意に増大した。一方、TRPV1,アデノシン受容体の発現に有意な変化は見られなかった。この事からRCSによる痛みを伝える感覚神経の機械感受性亢進にASIC3が関与している事が明らかになった。 3)RCS暴露による血清甲状腺ホルモン(トリヨードサイロニン:FT3、チロキシン:FT4)濃度への影響について調べた。その結果、RCS暴露で血清のFT3,FT4の濃度が有意に低下した。甲状腺ホルモンは、ATP分解酵素の活性を抑制する事が知られている。したがって、血清甲状腺ホルモン濃度の低下によりATP分解酵素の活性が脱抑制され、細胞外アデノシンがより多く産生されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬物筋注でATP放出が生じるかどうかをルシフェリンルシフェラーゼ法により検討する予定であったが、新型コロナウィルス感染症の流行による活動抑制などの影響、測定で使用する機器の調達に時間がかかり、セットアップを確立するだけにとどまってしまった。 一方で繰り返し寒冷ストレスによる筋痛覚過敏の病態解明は大きな進展があった。末梢性機構の解明の進展だけでなく、RCS暴露で甲状腺ホルモン濃度が有意に低下する事を明らかにした。これは病態の理解だけでなく薬物筋注のメカニズム解明にもつながるため、予定外の成果を得た。 したがって薬物筋注の鎮痛メカニズムは遅れているが、RCSによる筋痛覚過敏の病態解明は予定よりも進展したため総合評価として「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は薬物筋注による鎮痛機構解明とRCS暴露による筋痛覚過敏の病態解明について以下の事を行っていく予定である。 ATP測定のセットアップはできたので、今年は1)薬物筋注によりATPが放出されるか、2)この放出に対するRCS暴露の影響、3)この放出にパネキシン1やTRPV1が関与するかどうかを明らかにしていく予定である。更にこれらを確認できたら、血清甲状腺ホルモン濃度低下が薬物筋注に与えている影響についても調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
消耗品を買う予定であったが、新型コロナウィルス感染症流行の影響で予定通りに実験を進める事が出来なかったため残額が生じた。できなかった実験の消耗品を次年度に購入をする必要があり、残額はこれに使用する予定である。
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