2022 Fiscal Year Research-status Report
難治性の神経因性疼痛を抑制する脳由来新規生理活性物質の構造決定と生理作用の解析
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20K07768
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Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
池田 哲也 京都橘大学, 健康科学部, 教授 (20264369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 隆徳 宮崎大学, フロンティア科学総合研究センター, 准教授 (00381088)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アロディニア / APGWamide / 神経因性疼痛 / 神経障害性疼痛 / CCIモデルラット / 絞扼性神経障害モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経因性疼痛患者に見られるアロディニアの効果的な治療薬の開発を目指し、神経因性疼痛モデルラットに見られる疼痛行動であるアロディニアをバイオアッセイ系に用いて、ニワトリ脳神経系から新規抗アロディニア活性物質を単離精製し、その立体構造を明らかにし、生理活性を詳細に解析することを目的にしている。まず、効率よく精製を進めていくためバイオアッセイ系の開発を行った。飼育の容易さ、動物に与える苦痛の軽減、また、アロディニアを示すまでの期間を短縮するために、ラットの座骨神経を圧迫するCCI(絞扼性神経損傷)モデルを開発した。CCIモデルは腸由来の吸収糸で座骨神経を絞扼し、慢性の絞扼損傷を引き起こす方法が一般的であるが、本研究ではポリプロピレン(PP)のチューブを用いて神経を圧迫する方法を用いた。圧迫するPPチューブの直径の検討、圧迫する座骨神経の部位、圧迫する範囲等を工夫することによって効率よくCCIモデルを作ることが出来るようになった。このCCIモデルラットをバイオアッセイに用いて、800羽分のニワトリ脳組織をホモジナイズし、ゲルろ過、数段階のHPLCから得られた画分をアッセイして、数種の活性画分を得ることが出来た。昨年度は、紫外吸収でシングルピークを示す精製物を得ることが出来、2種の物質について、分析を行った。非常に量が少なかったため、構造決定は至らなかった。本年度はさらに精製を進めると共に、他の画分の活性も検討した。まだ、最終精製にいたっておらず、来年度まで研究期間を延長した。今年度は、本研究の申請書の計画に挙げた「①新規抗アロディニア活性物質の単離精製法の確立、②構造解析、③合成物を作製し、生理機能を明らかにする」の中で、「①新規抗アロディニア活性物質の単離精製法の確立」と「②構造解析」まで進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は「新規抗アロディニア活性物質」の構造を決定することを目指していたが、「新規抗アロディニア活性物質の単離精製法」を確立し、精製物を得るところまで進めることができたが、構造を決定するまでは至っていない。原因としては、コロナの影響もあり、精製に時間を要したこと、精製物が非常に少量で分析が非常に困難であったこと等があげられる。今後は、①安定したバイオアッセイのための手術手技の確立。②残っている他の活性画分から抗アロディニア活性物質を単離精製。③最終精製物の構造分析。できれば最終目標の④最終精製物を人工的に合成し、その活性の詳細な検討。まで進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究での一番の問題は「新規抗アロディニア活性物質」の最終精製物が非常に少なかった点であった。今年度は、効率よく精製するために、アッセイ系に用いるCCIモデルラットの作製法を工夫した。また、てアッセイ系を改良し、従来の von Frey フィラメントによる「機械的アロディニア」を使ったアッセイ法を使用とともに、熱プローブを用いた「熱アロディニア」によるアッセイ法を開発した。残っている活性画分からさらに精製を進め、「機械的アロディニア」と「熱アロディニア」の両方のアッセイ法でアッセイを行ったが、最終精製物を得るまでには至らなかった。そこで、来年度まで研究期間を延長して、更なるアッセイ系の改良と、新規抗アロディニア活性物質の精製を進め、構造決定を目指して行くことにした。 構造決定後は、得られた新規抗アロディニア生理活性物質を合成し、HPLC 等を用いて「物理化学的」に、また、バイオアッセイで「生物学的」に天然物と比較し、同一の物質であることを確認する。以降は合成物を用いて抗アロディニア活性やその濃度反応関係等を詳細に調べる。また、既存のレセプターアンタゴニスト等を用いて、関与する他の伝達物質を特定し、新規活性物質の薬理学的情報を蓄積し、その生理機能を明らかにする。そのためには、von Frey フィラメントによるアロディニアに対する行動実験だけでなく、プランター式鎮痛効果測定装置やランダルセリット式鎮痛効果測定装置等を用いて、痛覚そのものに対する新規の活性物質の作用も詳細に調べる必要がある。最終的には新規抗アロディニア活性物質の構造と活性を基に、さらに強力な抗アロディニア活性を持つ物質の構造を検討し、有用なアロディニアの治療薬の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は効率よくバイオアッセイが行えたため、使用するラットの匹数を予定より減らすことができた。また、本年度内に「新規抗アロディニア活性物質」が構造決定できなかったため、アロディニアだけでなく、痛覚そのものに対する新規の活性物質の作用も詳細に調べるために購入を計画していたプランター式鎮痛効果測定装置やランダルセリット式鎮痛効果測定装置等を購入することを延期した。研究期間自体も1年間延長し、来年度に次年度使用額を用いて、上記の実験装置を購入し研究を進めていく予定である。
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Research Products
(1 results)