2020 Fiscal Year Research-status Report
定位的深部脳波記録を応用した直接的なヒトでのてんかん原性機序の解明
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20K07785
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鎌田 崇嗣 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (70614460)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | てんかん / 定位的深部脳波記録 / てんかん外科手術 |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の研究では、研究代表者が確立した大脳皮質に皮質異形成を作製、生後6-7週目より無傷の海馬からの自発てんかん発作を発症するモデルラットを用いて示したグリア細胞と炎症関連性受容体のてんかん発症の機序への関与が、ヒトのてんかん発症においても同様に認められるかどうかを評価することを目的としている。そのために、ヒトの難治性てんかんの患者で、定位的深部(ステレオ)脳波記録(stereoelectroencephalography, SEEG)を経て、てんかん病変の切除を受けた患者の切除病変を用いてグリア細胞、炎症関連性受容体、コネキシン蛋白、NMDA受容体サブタイプ等の発現量を測定して評価する予定である。また、今回の目的はてんかん発症の機序を解明することである。実際には、難治性てんかんとして、てんかん外科手術の適応を検討する段階では、てんかん自体の発症から長期経過していることがほとんどである。しかし、皮質のてんかん原性を獲得した領域においても、その易興奮性の程度にはいくつかの段階が存在する。てんかん原性領域の易興奮性の程度の段階の違いをある程度正確に評価して区分、それぞれのグリア細胞、炎症関連性受容体、コネキシン蛋白、NMDA受容体サブタイプ等の発現量を測定して評価すれば、経時的な評価に換えることができる。今回は、SEEGを経ててんかん外科手術を実施された患者を対象としているため、SEEGの脳波記録のデータを用いて、発作時所見、0.5Hz未満のDC shift、高周波律動、電気刺激後の高電位の出現、等を評価して、てんかん原性領域の易興奮性を評価して、区分できる。まずはこれが第一段階である。現時点は、SEEGを経ててんかん外科手術を受けた対象症例を蓄積して、その脳波データを解析している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在は、薬物療法のみでは難治性てんかんとして経過しており、SEEGを経ててんかん外科手術を受けた対象となる患者の症例を蓄積して、その脳波データを解析している段階である。当施設では、2020年4月より2021年3月の段階で13症例の患者がSEEGを受け、その多くがてんかん原性領域を切除する外科手術を受けている(一部は切除以外の治療法選択、あるいはSEEGの実施のみで終了して、時間をおいてからてんかん外科手術となる症例もあり)。ただし、2020年初頭からの新型コロナウイルス感染流行を受けて、2020年3月以降SEEGの実施時期が延期された症例も多い。そのために研究の進歩状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
難治性てんかんに対して、てんかん外科手術を検討するためにSEEGを実施予定となっている中で同意を得られた患者を研究対象として2021年度、2022年度と蓄積していき、脳波データの解析を進めていく。脳波データの解析によって易興奮性の程度の区分がなされた時点で、予めてんかん手術によって切除された標本の一部より採取しておいた試料を用いてそれぞれのグリア細胞、炎症関連性受容体、コネキシン蛋白、NMDA受容体サブタイプ等の発現量をリアルタイムPCR法による測定を実施することを2022年度中途より開始していく予定である。
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Causes of Carryover |
今回の研究は、薬物療法に対して難治性の経過であるてんかん患者で、てんかん外科手術の適応を検討され、切除することによっててんかん発作の消失あるいは軽減が期待されるてんかん原性領域の推定のために定位的深部(ステレオ)脳波記録(SEEG)が実際された症例を対象としている。2020年初頭からの新型コロナウイルス流行によりSEEGの実施が延期された症例が多かったため、研究の進行の遅れが生じ、次年度使用額が生じた。
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