2020 Fiscal Year Research-status Report
核内低分子RNA snRNAU2関連断片の機能解明と肺癌予後マーカーとしての評価
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20K07791
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
相磯 聡子 杏林大学, 保健学部, 教授 (40195144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 宏明 杏林大学, 医学部, 教授 (80291326)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | snRNA / miRNA / コピー数多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画ではまず肺癌患者のゲノムDNAおよび血清を収集し、血清small RNAのdeep sequencingを行うと共に、snRNA U2遺伝子RNU2-1(以下U2遺伝子)コピー数、血清snRNA U2断片(以下U2断片)量および予後の関連性を解析する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、杏林大学病院における肺癌患者検体の収集が実施できなかったため、健常人検体を用いU2遺伝子コピー数と血清U2断片量の相関分析の条件設定、基礎的情報の収集を行った。 まず「ヒトを対象とした医学系研究」の承認を得、健常人ボランティア20名より全血および血清を得た。U2遺伝子のコピー数多型は非常に特殊で、U2遺伝子を含むコア配列は約6-kb、コピー数は10前後から数十にも及ぶ。故にこのコピー数を求めるために、従来はパルスフィールド電気泳動法が用いられてきた。しかし短時間にコピー数解析を行うために、令和2年度はリアルタイムPCRに基づく絶対定量の条件設定を行った。まず「遺伝子組み換え実験」の承認を得た後、絶対定量の標準DNAとしてU2遺伝子プラスミドクローンを作製した。この定量法を用い健常人20名のU2遺伝子コピー数を測定し、広いレンジで多型を示すことを確認した。 次に血清U2断片量測定に先立ち、U2断片の形状を確認した。すなわちU2断片はmiR-1246としてmiRBaseに登録されているが、血中にはmiRBaseタイプ以外のisoformが存在すると推測されたため、健常人混合血清を用い各isoformの割合を求めた。その結果、血清中のU2断片の9割以上が5’末端が短いisoformであることが明らかになった。更に「ヒトを対象とした医学系研究」の承認を得た上で、保存中の肺癌患者血清を用いて解析を行い、健常人と同様の結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の拡大により、杏林大学病院における肺癌患者検体の収集が実施できなかったこと、RNA関係の試薬の調達が困難であったこと、および予定していた実験時間が確保できなかったことが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実験条件の設定や基本的な情報収集は可能な限り健常人検体を用いて進める。当初の研究計画を遂行するためには杏林大学病院における肺癌患者検体の収集が不可欠であるが、現時点では実施の見通しが立たない。今後場合によっては研究材料を各種がん細胞株に切り替え、U2遺伝子コピー数とエクソソーム中のU2およびU2断片量、更にこれらとがん細胞としての属性(遊走能や浸潤能等)との関連性を解析する。 一方健常人検体を用いた解析の結果、U2遺伝子コピー数と血清U2断片量との間に有意な相関性が認められない場合は、まずエピジェネティックなU2遺伝子制御の有無を確認し、必要に応じ細胞生物学的な手法等も用いて、RNAのプロセシングおよび分解制御の可能性について解析する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、杏林大学病院における肺癌患者検体の収集が実施できなかった。これにより患者血清small RNA分画のdeep sequencing解析費用が次年度使用額となったことが主な理由である。今後、患者検体の収集が困難と判断された場合は、エクソソーム除去済みウシ胎児血清添加培地を用いた各種がん細胞株の培養上清よりエクソソームを得、これより抽出したsmall RNA分画についてRNA deep sequencing解析を行う。
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