2022 Fiscal Year Research-status Report
AIプラーク診断を用いた高齢者急性冠症候群治療における出血性イベント最少化戦略
Project/Area Number |
20K07793
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
新家 俊郎 昭和大学, 医学部, 教授 (60379419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 敬善 昭和大学, 医学部, 講師 (10439474)
若林 公平 昭和大学, 医学部, 准教授 (50384524)
山本 明和 昭和大学, 医学部, 講師 (60515592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / Artificial intelligence / 光干渉断層映像法 / 脂質異常 / 糖代謝異常 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人においても、急性冠症候群 (Acute coronary syndrome: ACS)発症後慢性期の再発率は高く、二次予防目的で、脂質管理、糖尿病管理、抗血栓療法が行われるが、抗血栓療法に伴って出血イベントを発症すれば予後の悪化につながる。Artificial intelligence (AI) を活用し、冠動脈血栓イベントの予測能が向上すれば、出血高リスク (High bleeding risk:HBR) 患者に対する抗血栓薬の減量は可能と考えられ、高齢化社会における至適治療戦略の確立のため本研究を実施した。これまでに、冠動脈プラークおよび冠動脈ステント留置部の光干渉断層映像 (Optical coherence tomography: OCT)画像を収集しAI解析を進め、血栓イベント予測指標の構築を行っている。また、同時に、脂質プロファイル、糖代謝プロファイル、炎症/酸化ストレスバイオマーカーを測定し、イベント予測指標を補完する枠組みを構築している。 ACSにおいて血栓イベントリスクが高いと考えられるプラーク破綻に関与する脂質マーカーを同定し、論文発表を行った。令和4年度には、追加解析として、冠動脈ステント内部に新規に発生する動脈硬化病変の予測因子についても、論文公表した。本データを用いることでAIによるリスク層別化が可能となれば、適切に血栓イベントリスクをコントロールしながら、出血イベント抑制を維持するための重要な指針が得られるものと考える。本年度AI解析を進めてきたが、石灰化結節によりACSを発症した症例の予後がプラーク破綻よりもイベントリスクが高いことが判明した。石灰化結節は、症例数が少ないことはAI解析による予後予測を不十分なものとさせており、症例数増加を図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初期検討として、冠動脈ステント留置部の慢性期OCT画像100例に対し、AI解析を行い、これまでの用手解析の結果と照合しその診断精度を向上させている。追加の100例に解析を進め、非被覆ストラット、非圧着ストラット検出の正診率が向上し、血栓イベント予測指標として活用可能なレベルに近づいていると言える。2023年3月までに、約200例のACS責任病変の解析を終了し、イベントの予測因子となり得る、プラーク破綻、プラークびらん、石灰化結節、脂質プラークの程度(Lipid index)、石灰化プラークの程度(Calcium index)、コレステロール結晶(Cholesterol crystal)、マクロファージ集積、マイクロチャンネルの同定を、経験豊富な判定者によって診断を行った。これらとAI診断との整合性を検証し、AI診断制度を高めるプロセスを進めている。石灰化結節によってACSを発症した症例数が未だ十分とは言えず、進捗はやや遅れており1年間の延長とした。また、同対象患者において、血清LDL-Cをはじめとする通常診療において血栓イベントリスクを推定するバイオマーカーを計測するとともに、small dense LDL 、HDL特異的コレステロール取込み能 (cholesterol uptake capacity: CUC)、CGMの解析を進めている。これまでのところ、血中small dense LDL, EPA値とプラーク性状との関連性につき論文公表を行い、鋭意有用なバイオマーカーの検出につき解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、AI解析による血栓イベント予測能を向上させるために、十分な登録症例数を得ることを推進する。先行する約100例の1年時イベントでは、主要心血管イベント(MACE)は10%、出血性イベント(BARC分類タイプ2, 3, 5)は4%と発生頻度が少なく、イベントを予測するモデルの構築が困難であるたった。主研究施設ならびに共同研究施設において撮像された約600例のOCT画像を収集しAI解析を追加で行う予定である。脂質プロファイル、糖代謝プロファイルなどバイオマーカーについても同様にできる限り収集するとともに、各種出血リスクスコアなど臨床指標のデータベースを構築し、出血イベント/血栓イベントとの関連因子を統計学的に抽出する。また同時に、脂質代謝、血糖変動と冠動脈プラークの進展、退縮機序の関係を検証するとともに、出血因子、血栓形成因子に関する複合因子の検討を進めることとする。当初の研究計画に従い、登録症例を、臨床的判断に基づく高強度血栓療法群と低強度血栓療法群に群分けし、それぞれの対象患者におけるAI判断による血栓イベントリスクの高低ごとに、実際に発症した血栓イベント、出血イベントとの関連を検討し、精緻な予後予測指標を策定する方針である。
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Causes of Carryover |
OCT画像のAI解析につき、急性冠症候群の原因となる脂質性プラーク、脆弱性プラークに関しては十分な症例数が登録できており、その予測能の向上や予後との関連について検討できるサンプル数が得られている。一方で、石灰化結節については、症例に占める割合が少なく(全体の5%)、次年度にわたって収集した症例のOCT画像を解析する予定である。そのため、次年度に執行する予算残額が発生した。
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Research Products
(4 results)