2021 Fiscal Year Research-status Report
サルコペニアの新たな治療戦略確立を目指した新規筋衛生細胞分泌蛋白の機能解析
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20K07810
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
竹本 稔 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (60447307)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | サルコペニア / 筋衛星細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
「健康長寿」の延伸は超高齢社会を迎えた我が国の大きな課題である。この健康長寿を妨げる要因に加齢に伴う「サルコペニア」がある。サルコペニアとは加齢に伴う骨格筋量の低下と機能低下であり、高齢者の日常生活動作を著しく低下させる。その発症機転は十分に明らかではないが、加齢に伴う骨格筋の再生力低下が関与する。骨格筋の再生には筋衛星細胞の増殖・分化が重要であり、我々は活性化した筋衛星細胞から分泌され、筋衛星細胞の増殖・分化を促進する新しい因子 R3h domain containing-like (R3hdml)を同定した。本研究はR3hdmlの機能解析を通して筋再生メカニズムを明らかにし、サルコペニアの新たな介入法の開発を最終目的とした基盤研究である。本研究では①老化モデルマウスや筋萎縮モデルマウスに対するR3hdmlによる治療介入効果とそのメカニズム解析、② 血液中R3hdml濃度を測定しその臨床的意義を明らかにすることを計画し順次研究を進めている。今年度はR3hdmlの臨床的意義を明らかにする目的でR3hdmlに対する自己抗体測定を行った。その結果、R3hdmlに対する自己抗体は健常者に比し、慢性腎臓病患者で増加していることを明らかにした。先年度の研究でR3hdmlの機能解析を目的に腎糸球体における機能解析をところ、R3hdmlはポドサイトから分泌され、TGF-βの細胞内シグナルであるp38MAPKのリン酸化を抑制し、ポドサイトのアポトーシスを抑制することを明らかにして報告している(J Mol Med (Berl). 2021 Feb 23)。これらの知見を今後、骨格筋研究にも生かしてゆく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はR3hdmlの臨床的意義を明らかにする目的でR3hdmlに対する自己抗体測定を行った。【方法】 研究同意が得られた健常者(84名)、糖尿病腎症(145名)、糸球体硬化症(32名)、糸球体腎炎(123名)を対象とした。R3hdmlタンパクの一部をGST (glutathione S-transferases)-融合タンパクとして大腸菌で発現させ、glutathione-Sepharoseを用いてアフィニティ精製をした。この精製タンパク質を抗原として、glutathione-donor beadsとanti-human-IgG-acceptor beadsを用いてAlpha -LISA法により血清抗体レベルを測定した。【結果】血中抗R3hdml抗体は健常者(9,483±5,646)に比し、糖尿病腎症(15619±10783, p<0.001)、糸球体硬化症(17553±10783, p<0.001)、糸球体腎炎 (15147±10602, p<0.001)と慢性腎臓病患者において有意に抗体レベルが高かった。健常者の平均値+2SDをカットオフに値に設定した時の陽性率は糖尿病腎症(18.7%)、糸球体硬化症(34.4%)、糸球体腎炎(24.4%)であった。これまでの検討では、R3hdmlは腎糸球体ポドサイトから分泌され、TGF-βの細胞内シグナルであるp38MAPKのリン酸 化を抑制し、ポドサイトのアポトーシスを抑制することを明らかにして報告した(J Mol Med (Berl). 2021 Feb 23)。今年度の検討により、Rh3dmlに対する自己抗体がR3hdmlの機能低下をもたらし、腎症の発症・進展に関与する可能性が示唆された。今後はこれらの知見を骨格筋研究にも生かしてゆく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はR3hdmlの機能解析を通して筋再生メカニズムを明らかにし、サルコペニアの新たな介入法の開発を最終目的とした基盤研究である。本研究では①老化モデルマウスや筋萎縮モデルマウスに対するR3hdmlによる治療介入効果とそのメカニズム解析、② 血液中R3hdml濃度を測定しその臨床的意義を明らかにすることを計画し順次研究を進めている。今年度はR3hdmlに対する自己抗体が慢性腎臓病患者で増加していることを明らかにした。R3hdmlはTGFβ-p38MAPK経路を抑制し、ポドサイトのアポトーシスを抑制する。我々は肝臓でR3hdmlを過剰発現させ血中濃度を増加させることにより、糖尿病惹起マウスのアルブミン尿を抑制するすることを報告している。今回の検討では慢性腎臓病患者では血中抗R3hdml抗体が増加することが明らかとなった。この抗体によりR3hdmlタンパクの機能が抑制されると仮定すると、慢性腎臓病の発症・進展に関与する可能性がある。今後は、この自己抗体値とサルコペニアとの関連や、②R3hdmlタンパク量測定の臨床的意義に関する検討を行いつつ、①の老化モデルマウスや筋萎縮モデルマウスに対するR3hdmlによる治療介入効果とそのメカニズム解析を進めてゆく予定である。
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Research Products
(1 results)