2020 Fiscal Year Research-status Report
血清中シトルリン化フィブリノゲン測定による好中球細胞外トラップ検出の検討
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20K07822
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 由美子 信州大学, 学術研究院保健学系, 講師(特定雇用) (40757241)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 伸生 信州大学, 学術研究院保健学系, 教授 (60252110)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シトルリン化フィブリノゲン / NETs / PAD |
Outline of Annual Research Achievements |
好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular trap: NETs)は感染症だけでなく動脈硬化、微小血栓症、腫瘍といった種々の病態に関与することが明らかになってきている。しかし、NETsを日常検査で測定する方法はなく、臨床的に把握することは難しい。本研究では、NETsのマーカーとされるシトルリン化ヒストンH3(C-H3)同様にペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によって産生されるシトルリン化フィブリノーゲン(C-Fbg)が様々な疾患でどのような変動を示すか、またNETsのマーカーとなりうるかを評価する。 本年度は、菌血症患者13症例(59検体)における血清中C-Fbgの変動を検討した。菌血症患者におけるC-Fbg濃度(中央値[四分範囲]:153.7 ng/mL[108.1-223.8 ng/mL])は、健常人(HC;38名)群のC-Fbg濃度(70.8 ng/mL [52.7-81.2 ng/mL])よりも有意に高かった(p<0.001)。C-Fbgと病態との関係を調べるため、菌血症患者のC-Fbgと他の炎症マーカーとの関係を評価した結果、C-Fbg濃度はWBC(r=0.541、p<0.001)および好中球数(r=0.533、p<0.001)と中程度の正の相関があった。一方、CRP(r=0.299、p=0.08)やPCT(r=0.203、p=0.319)濃度とは相関がなく、Fbg濃度とは弱い正の相関があった(r=0.340、p<0.05)。菌血症の臨床経過を5段階に分類し、各段階のC-Fbg濃度と各炎症マーカー及びC-H3を比較したところ、C-Fbgの変動は好中球数とFbgの変動に類似していたが、CRP、PCT、C-H3とは異なっていた。今回用いた菌血症検体はC-H3の変動が顕著ではなく、C-FbgとNETsとの関係性は見いだせなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に従い、予定していた感染症におけるシトルリン化フィブリノゲンの変動解析が終了した。以上より、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
PADが腫瘍により発現していることが報告されており、またNETsが転移と関係しているとの報告もある。次年度は計画にあげた肝がん、大腸がんなどの患者血清においてC-Fbgが健常人と比較してどのようであるか、また進行がん、転移性のがんで変化があるかを検討する予定である。現行の腫瘍マーカーなどの変動との比較により病態との関係を検証し、腫瘍マーカー、がん転移マーカーとして有用であるかを評価する。 測定に長期保存されている血清を用いる必要もあることから、保存安定性が懸念されるC-H3に代わりNETsのマーカーとして、Myeloperoxidase-DNA複合体の測定系の確立を計画している。また、NETs形成に伴いフィブリノゲンがシトルリン化されるか、in vitroの実験系を構築し、検証する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度研究費の主な使用目的は、消耗品の購入と国際学会の参加費であった。当初計画で見込んだよりも安価に研究が進み、またcovid-19の影響により学会参加ができなかったため、次年度使用額が生じた。令和3年度経費と合わせて消耗品購入費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)