2022 Fiscal Year Research-status Report
Diagnostic stewardship整備に向けた微生物検査診断の質的分析
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20K07846
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
馬場 尚志 岐阜大学, 医学部附属病院, 教授 (60359750)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Diagnostic stewardship / 微生物検査診断 / 質的分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年4月、今後5年間のわが国の薬剤耐性(AMR)アクションプランが示されるなど、ポストコロナにおいて、薬剤耐性菌対策は再び最重要課題の1つとなろう。その柱の1つである抗菌薬適正使用の実践には、適切な微生物検査の実施および解釈、正確な原因菌判定が不可欠である。本研究では、各施設の微生物検査体制の調査とともに、小規模施設を含む規模の異なる複数の医療施設において、後方視的なカルテレビューとともに、医師に対する個別インタビューを実施し、微生物検査に関する医師の思考過程や求められる知識、検査部門とのコミュニケーションなどについて、質的に評価・分析することを計画した。 しかし、計画開始年度の2020年度以降この3年間、新型コロナウイルス感染症の流行に繰り返し見舞われる予期せぬ事態が生じ、各施設の微生物検査担当者・感染管理担当者が新型コロナウイルス感染症対応に追われ、本研究の特色であった対面調査や訪問調査も大きく制限された。2022年度もオミクロン株による大規模流行という新たなフェーズを迎え、アンケートによる基本調査とその結果の公表以外には本来の研究計画を進められていない。 一方、コロナ禍の中で、オンライン技術の活用など県内の各医療施設との情報共有・連携体制の構築を進めてきた。2022年度は、4月に行われた診療報酬改定で感染対策向上加算の要件として保健所や地域の医師会との枠組みが加わり、これら機関との情報共有を図るとともに、地域社会全体の実状を明らかにすべく、地域医師会に所属する100を超える診療所の抗菌薬の使用状況や微生物検査の実施状況も把握できる体制を構築した。 2023年度は、この体制を活用して病院だけでなく診療所における微生物検査体制の現状・課題について、新型コロナウイルス感染症による3年にわたる研究の遅れを勘案しつつ、着実な研究の遂行を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年の本研究計画の申請時には、岐阜大学医学部附属病院が事務局を務める岐阜院内感染対策検討会に参加する129施設を対象とし基礎的調査を進める予定としていた。しかし、2020年度以降、社会全体が新型コロナウイルス感染症の流行に繰り返し見舞われ、同会の中止・開催形式の大きな変更を余儀なくされた。また、各施設の微生物検査担当者・感染管理担当者の多くが、新型コロナウイルス感染症への対応に追われ、この3年間、研究(協力)時間の確保が極めて困難な状況が続いている。加えて、本研究の特色の1つとして、医師への個別インタビューなど対面調査を取り入れる予定であったが、診療以外の長時間の対面調査や外来者訪問なども大きく制限され、本研究の遂行にとって大きな障害となった。 一方、以前より合同カンファレンスを開催してきた岐阜県内の感染防止対策加算算定施設全57施設ではオンライン技術の活用など体制整備を進め、その参加施設(44%が200床以下の中小規模施設)を対象に基本調査を実施した。この調査の中で、感染防止対策加算を算定する施設であっても、42%が微生物検査をすべて外部委託しているほか、院内で実施している施設でも半数以上が休日や夜間には検査を実施しておらず、検体の質管理も不十分であるなど様々な問題点が明らかになりつつある。さらに、2022年度診療報酬改定における外来感染対策向上加算の新設を契機として、地域社会全体の実状を明らかにすべく、地域医師会に所属する100を超える診療所における抗菌薬の使用状況や微生物検査の実施状況を把握する体制を構築した。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、これまでに実施した微生物検査体制に関する多施設を対象とした基本調査に加え、本研究の目的であるDiagnostic stewardship整備に向けた職種間コミュニケーションの質に関する調査を進めていく予定である。本研究に不可欠な要素である個別インタビューについては、これまで周辺環境の整備とともに、オンライン技術の活用など対面調査に代わる手法も模索してきたが、情報セキュリティーの問題などから診療情報を取り扱うことはできず、対面調査が必要である。3年にわたる新型コロナウイルス感染症による研究の遅れを勘案しつつ、研究対象を自施設に絞り込むなど縮小・変更を検討している。一方、2022年度に構築した地域医師会に所属する100を超える診療所における抗菌薬の使用状況や微生物検査の実施状況を把握する体制の活用し、診療所を含めた地域社会における微生物検査診断の実状を明らかにすべく、研究の遂行を図っていく。
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Causes of Carryover |
計画開始年度の2020年度以降この3年間、新型コロナウイルス感染症の流行に繰り返し見舞われる予期せぬ事態が生じ、各施設の微生物検査担当者・感染管理担当者が新型コロナウイルス感染症対応に追われ、本研究の特色であった対面調査や訪問調査も大きく制限された。2022年度もオミクロン株による大規模流行という新たなフェーズを迎え、前年に行ったアンケートによる基本調査結果の公表以外に研究計画を進められなかった。 2023年度は、3年にわたる新型コロナウイルス感染症による研究の遅れを勘案しつつ、研究対象を絞り込むなど縮小・変更を検討している一方、この間に構築した地域医師会に所属する100を超える診療所における抗菌薬の使用状況や微生物検査の実施状況を把握する体制の活用し、診療所を含めた地域社会における微生物検査診断の実状を明らかにすべく、調査研究および解析、さらには成果の公表を行っていく。
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