2020 Fiscal Year Research-status Report
Erythrocyte mean age affects HbA1c: estimation with erythrocyte creatine
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20K07850
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
奥宮 敏可 熊本大学, 大学院生命科学研究部(保), 教授 (50284435)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 赤血球内クレアチン / 赤血球加齢 / 赤血球寿命 / 溶血性貧血 / 造血能 / 糖尿病 / HbA1c / グリコアルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は血糖コントロールの指標として広く用いられているが、赤血球寿命が短縮する溶血性貧血などの様々な疾患や病態で偽低値を示すことが知られている。しかし、貧血を認めない代償性溶血の場合にもHbA1cは偽低値を示す。網赤血球やハプトグロビンなどの従来の溶血指標が陽性であれば、溶血の存在の把握が可能であるが、これらの溶血指標は感度が充分でないため、HbA1cが低値を示す例の中にこれらの検査が陽性を示さない溶血(不顕性溶血)例が存在することが最近明らかになった。アイソトープを用いた赤血球寿命測定は高感度で測定精度も高いが、患者への負担や検査自体が煩雑であるため日常検査には適さない。1998年、我々は赤血球内のクレアチン含有量を測定することで、1回の採血で溶血や失血に伴う造血亢進による循環赤血球の平均生存日数(平均加齢)の低下を評価できる方法を確立した。赤血球内クレアチン(EC)を測定することにより、軽微であるが持続的な溶血を高感度に検出することが可能である。今回、ECを測定し、HbA1cへの溶血による赤血球の平均加齢の低下の影響を解析するとともに、EC測定値を基準とした正しいHbA1c値の評価方法の確立を目的としている。本研究成果により、ECにもとづくHbA1cの評価基準が策定されれば、糖尿病患者の血糖コントロールのみならず、多くの健常者を対象とした健診などにおける糖尿病予備軍の見落としを防ぐこととが可能となり、国民の健康維持に大きく貢献するものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の被験者となる患者様および健常者(以下、研究対象者)からの血液試料の採取は全て共同研究施設で行われた。市立川西病院と陣内病院においては患者様に対して、高木病院においては人間ドックのために訪れた健常者に対して、充分な説明をした上で同意を頂き検査終了後の既存血液をご提供頂くこととした。一方、熊本大学病院中央検査部ならびに高知大学医学部附属病院検査部に関しては、既に検査が終了し後に本来は医療廃棄物として廃棄される既存試料の一部を本研究に使用した。したがって、この研究のためだけに血液を採取することはない。熊本大学病院中央検査部および高知大学医学部附属病院検査部では、この既存血液の試験管に張られている個人情報に関わるラベルを全て剥がし、匿名化されているもの(特定の個人を識別することができないものに限る)として共同研究施設ごとにシリアル番号を試験管に貼付した。熊本大学医学部附属病院の場合は、奥宮研究室の実験助手が匿名化された試料を直接検査部に収集に行った。その他の施設からの試料は、匿名化された後にある程度試料数が集まった時点で、クール宅急便にて熊本大学大学院生命科学研究部生体情報解析学分野(奥宮研究室)に送られてきた。奥宮研究室では、届けられた血液試料を共同研究施設ごとのシリアル番号で管理し、EC測定に供した。EC測定は、血液試料をさらに分析可能となるように溶血や除蛋白処理を行い、その除蛋白濾液を試料として、申請者らが開発した高感度EC測定法で測定を行った。熊本大学病院中央検査部ならびに高知大学医学部附属病院検査部からの試料は、既に網状赤血球数でグルーピングされているので、グループ毎のECやHbA1c、グリコアルブミン(GA)、1,5-アンヒドログルシトール(1,5,-AG)などを測定し、各検査項目への赤血球の平均加齢の影響を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
ECは骨髄での造血動態の変化により変動し赤血球寿命を反映する指標である。これまでは溶血性疾患のHbA1cへの赤血球寿命変動の影響を中心に検討を行ってきた。その結果、軽微な溶血でもECは変動しHbA1cは高値をとることが明らかとなった。そこで今後は、貧血に至らない不顕性溶血の症例を対象に、その病態と赤血球崩壊との関連性を解析する。また、その過程でECを用いて赤血球寿命を求める数理モデル式を開発する。その式により赤血球の半寿命(t1/2)を求め、各種疾患における赤血球寿命の変動と病態の関係を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は新型コロナウイルスの蔓延のため、大学院生や卒研生が登校を控えることもあり、予定通りの実験が実施できなかった。
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