2021 Fiscal Year Research-status Report
Erythrocyte mean age affects HbA1c: estimation with erythrocyte creatine
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20K07850
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Research Institution | Kochi Gakuen University |
Principal Investigator |
奥宮 敏可 高知学園大学, 健康科学部, 教授 (50284435)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 赤血球内クレアチン / 赤血球加齢 / 赤血球寿命 / 溶血性貧血 / 造血能 / 糖尿病 / ヘモグロビンA1c / グリコアルブミン |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病の診断ならびに経過観察のゴールドスタンダードとして利用されている。HbA1cの測定法には基準法としてHPLC法、大量検体処理法として酵素法や免疫法がある。健診においては、HbA1cの測定は大量検体処理の必要性から酵素法で測定される場合が多い。現在、これらの測定法間での値の乖離が問題視されている。赤血球内クレアチン(EC)は赤血球の平均加齢(赤血球寿命)の指標として考えられおり、ECが高値の場合に赤血球平均加齢の低下(赤血球寿命の短縮)を意味する。我々は酵素法によるHbA1c測定法を用いて、検体採取と保存の問題について検討した。赤血球回収位置の検討では、HbA1cは遠心後の赤血球層の中層よりも上層の方が有意に低値を示し、ECは上層の方が高値を示した。若い赤血球ほどECが高いことから、上層には比重の軽い若い赤血球が多く存在しており、若い赤血球はグルコースに曝露される時間が短いためにHbA1cが低値を示したものと思われた。検体保存の検討においては、保存前の(EDTA管)E管と(NaF管)F管でHbA1cに差は認められなかったが、F管では保存前に比して4℃で24時間保存するとHbA1cの有意な低下が認められた。4℃に24時間保存したF管では顕著に溶血が認められることから、この溶血がHbA1c低下の要因と考えられた。24時間保存後に赤血球を洗浄したものをHPLCで測定しても洗浄前と比べHbA1cが低下を示し、ECは逆に増加を示したことから、保存中にHbA1cを多く含む古い赤血球が溶血したものと思われた。健診等でF管を用いる際は保存時間をできるだけ短くするか、HbA1c専用にE管に採血することが必要と思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
記述のごとく、ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、糖尿病の診断ならびに経過観察のゴールドスタンダードとして利用されている。HbA1cの測定法には基準法としてHPLC法、大量検体処理法として酵素法や免疫法がある。現在、これらの測定法間での値の乖離が問題視されている。一方、赤血球内クレアチン(EC)は赤血球の平均加齢(赤血球寿命)の指標として考えられている。我々は酵素法を用いて、検体の室温保存や採血管の種類による影響に加えて透析法の違いによる溶血について現在検討を行っている。血液透析患者のECは夜間透析患者ならびに腹膜透析患者比べ有意に高値を示した。しかし、ヘモグロビン濃度は各透析群で有意な差は認められなかった。このことから、血液透析では代償性の貧血(溶血)が生じていることが示唆された。これに比して腹膜透析法や夜間透析では赤血球へのストレスが少なく血液透析で認められた溶血亢進は存在しないものと思われた。このようにECは、ヘモグロビンが低下する前の代償性の溶血も検出できることから、持続的で軽微な溶血の指標として有用と思われた。昨年、当研究室では血液検体の輸送時の問題でHbA1cが変動するのではないかと考え、検討を行った。冷蔵4℃で保存した場合、明らかに溶血が起こり、HbA1cは低値を示した。冷蔵保存の場合、補体の活性化等の影響で溶血が亢進する可能性も考えられることから、室温保存の条件でも同様の現象が観察されるか現在検討を行っている。このことから、軽微な溶血でもECは高値をとることが明らかとなった。そこで今後は、貧血に至らない不顕性溶血の症例を対象に、その病態と赤血球崩壊との関連性を解析する。また、その過程でECを用いて赤血球寿命を求める数理モデル式を開発する。その式により赤血球の半寿命(t1/2)を求め、各種疾患における赤血球寿命の変動と病態の関係を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄での造血動態の亢進に伴い循環血中に若い赤血球が増えるとECが増加する。したがって、ECは骨髄の造血能の指標としても捉えることができる。透析患者では腎性貧血の是正のためにエリスロポエチンが投与されている。このエリスロポエチンに対する反応性を評価することで骨髄での造血能の評価をすることが可能であると考える。各種透析患者を対象としてECを測定し、骨髄での造血能の評価を行う。また、これまでは溶血性疾患のHbA1cへの赤血球寿命変動の影響を中心に検討を行ってきた。その結果、軽微な溶血でもECは変動しHbA1cは高値をとることが明らかとなった。そこで今後は、貧血に至らない不顕性溶血の症例を対象に、その病態と赤血球崩壊との関連性を解析する。また、その過程でECを用いて赤血球寿命を求める数理モデル式を開発する。その式により赤血球の半寿命(t1/2)を求め、各種疾患における赤血球寿命の変動と病態の関係を検討する。
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Causes of Carryover |
所属(大学)が変わったため、研究環境が変わり、当初の実験計画の一部が実施できなくなり残余金が生じた。
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Research Products
(1 results)