2021 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of host-mediated anti-influenza virus activity of a Kampo medicine and its active ingredients
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20K07859
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
永井 隆之 北里大学, 大学院感染制御科学府, 准教授 (00172487)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 寛章 北里大学, 大学院感染制御科学府, 教授 (70161601)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 漢方方剤 / 補中益気湯 / インフルエンザウイルス / 抗ウイルス活性 / 宿主介在性 / ウイルス性肺炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
「補中益気湯(HET)」は10種の植物性生薬から構成される漢方処方であるが、構成生薬のうち白朮と蒼朮が入れ替え可能で、その薬効の異同については不明な点が多い。そこで白朮配合HETについて、poly(I:C)誘発肺炎症モデルマウスを用いて肺粘膜免疫系に対する作用の解析を行うとともに、作用成分の解明を試みた。 Poly(I:C)誘発肺炎症モデルマウスでは肺においてI型インターフェロン(IFN)によって誘導されるISGs(IFN誘導性遺伝子群)などのウイルス複製を阻害する抵抗性因子群の一部の発現増強が観察される。HETのこれらの抵抗性因子の発現に対する影響を検討した結果、ISG15、OAS3及びRNase L遺伝子mRNAの発現量の有意な増加が観察された。 白朮配合剤のラットへの経口投与で血漿、尿及び糞便中に検出される含有成分及び体内代謝産物14成分について、ヒト気道上皮細胞株(BEAS-2B細胞)で、poly(I:C)処置による炎症性ケモカイン(CXCL10)産生に対する影響の検討を行った結果、CXCL10産生を抑制する5成分が選別できた。そこで、poly(I:C)誘発肺炎症モデルマウスに5成分(10 mg/kg)を経口投与し、肺におけるISGs発現量の評価を行った結果、poly(I:C)接種により増加したISG15遺伝子mRNAの発現量が6-ギンゲロール(生姜成分)投与でさらに有意に増加した。また、poly(I:C)接種により減少傾向を示したRNase L遺伝子mRNA発現量はノビレチン(陳皮成分)及び6-ギンゲロール投与で有意に回復した。 HETは一部のウイルス抵抗性因子の発現を増加させ、RNAウイルス感染に対する先天性感染防御免疫系を賦活化する可能性が考えられた。一方、含有成分のノビレチン及び6-ギンゲロールがウイルス抵抗性因子の発現増強作用に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、補中益気湯のインフルエンザウイルス感染に対する有効性の作用機序について、気道免疫系に対する作用を中心に解析するとともに、作用成分の解明を行うことを目的としている。 令和3 (2021)年度は、①補中益気湯のインフルエンザウイルス感染に対する効果と作用機序の検討、②補中益気湯のウイルス性気道炎症に対する効果及び作用機序の検討、並びに③ウイルス性気道炎症に対する補中益気湯中の活性成分の検討を計画していたが、②補中益気湯のウイルス性気道炎症に対する効果及び作用機序の検討については、研究実績の概要に記載した成果が得られた。また、③ウイルス性気道炎症に対する補中益気湯中の活性成分の検討についても一部、研究実績の概要に記載した成果が得られた。①補中益気湯のインフルエンザウイルス感染に対する効果と作用機序の検討についても既に実験を行って検体を採取し、採取した検体については令和3 (2021)年度に解析を開始しており、令和4 (2022)年度に継続して解析を行う予定である。 以上のことから、(2)おおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
①補中益気湯のインフルエンザウイルス感染に対する効果と作用機序の検討については、既に補中益気湯を予防的に経口投与したインフルエンザウイルス感染マウスの肺試料を採取していることから、これらについてインフルエンザウイルスの増殖、肺炎症及びISGs (インターフェロン誘導性遺伝子群)などのウイルスの複製を阻害するウイルス抵抗性因子に対する補中益気湯の作用及び作用機序について検討を進める予定である。また、②補中益気湯のウイルス性気道炎症に対する効果及び作用機序の検討については、poly(I:C)の肺接種で誘導される気道炎症モデルマウスでウイルス抵抗性因子群の発現に対する補中益気湯の作用について検討を行う予定である。さらに、③ウイルス性気道炎症に対する補中益気湯中の活性成分の検討については、補中益気湯の経口投与によって体内で検出される補中益気湯含有成分及び体内代謝産物についてインフルエンザウイルス感染及びウイルス性気道炎症に対する効果と作用機序を検討するとともに、補中益気湯からの活性成分の精製・同定を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
生じた次年度使用額は601円である。 納入業者への支払いは銀行振込で行っているが、110円から484円の振込手数料がかかり、実質的に使用できる金額は117円から491円となり、極めて非効率的であるため、令和3 (2021)年度は使用しなかった。 生じた次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて物品費として使用させて頂く予定である。
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[Journal Article] Preparation of tenuifolin from Polygala senega L. root using a hydrolytic continuous flow system under high-temperature, high-pressure conditions2021
Author(s)
Tatsuya Shirahata, Rintaro Miyaishi, Tatsuki Kitazoe, Masaya Saito, Yuki Taneoka, Shuhei Hidaka, Masaki Yokoyama, Takayori Tojima, Tatsuya Katsumi, Nozomu Hirata, Takashi Nishino, Eisuke Kaji, Haruki Yamada, Takayuki Nagai, Hiroaki Kiyohara, Shunsuke Nakamori, Naruki Konishi, Yoshinori Kobayashi
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Journal Title
The Journal of Organic Chemistry
Volume: 86 (23)
Pages: 16268-16277
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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