Outline of Annual Research Achievements |
柴葛解肌湯(SKGT)はインフルエンザなどに使用される漢方処方であるが、薬効の基礎医学的検証は殆どは行われていない。そこで、SKGT煎剤の呼吸器ウイルス感染症に対する有効性と作用機序について、インフルエンザウイルス(IFV)飛沫感染モデルマウス及びpoly(I:C)誘発肺炎症モデルマウスを用いて検討を行った。 その結果、IFV飛沫感染モデルマウスではSKGTの治療的経口投与により、肺における感染性ウイルス価が有意に低下し、ウイルス増殖の抑制が認められた。そこで、SKGTの作用機序を明らかにするため、I型インターフェロン(IFN)によって誘導されるISGs(IFN誘導遺伝子)の産生に関与する因子の遺伝子mRNA発現量を測定したところ、肺においてウイルスRNAセンサー(Tlr3, Ddx58, Ifih1)、I型IFN転写因子(Irf7)、I型IFN (Ifnb1, Ifna4)、I型IFN受容体(Ifnar1, Ifnar2)及びISGs転写因子(Irf9)の遺伝子発現を有意に増加させた。また、SKGTは肺においてISGs (Mx1, Isg15, Oas1, Rsad2, Bst2, Mx2, Ddx60, Isg20, Ifitm1, Samhd1, Eif2ak2, Ppia, Pkp2, Trim32)の遺伝子発現量、並びにCOVID-19の重症化を抑制するDock2の遺伝子発現量を有意に増加させた。一方、poly(I:C)誘発肺炎症モデルマウスではSKGTの経口投与により肺におけるTlr3, Ifih1, Irf3, Irf7, Ifnb1, Ifnar2, Irf9, Mx1, Oas1, Dock2の遺伝子発現量が有意に増加した。 これらの結果より、SKGTは抗IFV活性を有し、その作用には肺の先天性感染防御免疫誘導経路の活性化が関与していることが示唆された。
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