2021 Fiscal Year Research-status Report
Diagnostic and therapeutic approach for sporadic inclusion body myositis via identification of pathomechanism of the autoantibodies.
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20K07870
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
山下 賢 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (20457592)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 孤発性封入体筋炎 / cN1A / IFN-γ |
Outline of Annual Research Achievements |
封入体筋炎(sIBM)は大腿部や手指の筋力低下、嚥下障害が進行し、次第に臥床状態となる難治性筋疾患であるが、免疫療法が無効で、患者QOLの改善が喫緊の課題である。本疾患の根本的病態を解明し、それに基づく治療法開発が不可欠である。Cytosolic 5’-nucleotidase 1A (cN1A)は骨格筋に多く発現する細胞質蛋白であり、アデノシン一リン酸を加水分解し、細胞質内での核酸代謝に関与する。このcN1Aは、sIBM患者血漿中に検出される自己抗体の標的抗原であることが報告されている。しかし細胞質蛋白であるcN1Aに対して、自己抗体が産生されるメカニズムやその病原性は不明である。sIBM、多発筋炎 (PM)、皮膚筋炎 (DM)、神経原性筋萎縮 (NA)の骨格筋組織を用いて、cN1Aおよびmajor histocompatibility complex-class II (MHC-II)、Class II transactivator (CIITA)、myxovirus resistance protein 1 (MxA)に対する抗体により蛍光免疫染色を行い、それぞれの蛋白の局在の関連性を評価した。cN1Aは、PMやNAでは細胞質に局在したが、sIBMでは高頻度に筋形質膜に局在し、DMでは筋束周辺の筋線維で筋形質膜への局在が見られた。sIBM骨格筋において、cN1Aは高頻度にMHC-IIと共局在を示した。さらにMHC-IIの発現を規定するCIITAは、sIBM骨格筋では核に局在し、活性化が示された。一方DMでは、MxAが陽性となる筋束周辺の筋線維でcN1Aの筋形質膜への局在変化が見られ、この局在変化にはIFN-γの関与が推測された。sIBM骨格筋において、cN1Aは筋形質膜に局在し、MHC-IIと共局在することで、抗cN1A抗体産生に関与する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①抗cN1A抗体陽性症例における臨床病理学的特徴の解明に関しては、順調に臨床情報および血清の収集が進み、2022年3月末時点で570例の収集を行なっている。その結果、ENMC2011のIBM診断基準を満たす352例において、本抗体陽性191例、陰性161例の臨床情報を解析し、陽性例で手指屈曲優位の筋力低下、握力の左右差の絶対値、ステロイド治療有効率において有意差を見出し、臨床的特徴を支持する診断マーカーとなる可能性を見出している。②抗cN1A抗体産生メカニズムに関しては、sIBM骨格筋においてIFN-γ曝露を介してcN1Aは筋形質膜に局在し、MHC-IIと共局在することで、抗cN1A抗体産生に関与する可能性を明らかにした。本研究結果を踏まえて、cN1A受動および能動免疫モデルに対してIFN-γをターゲットとした治療介入の有効性を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
抗cN1A抗体陽性症例における臨床病理学的特徴の解明に関連して、現在使用している定性的セルベースアッセイ法は陽性および陰性の判定が主観的となり、多検体の検出に労力を要するという欠点がある。今後、セルベースアッセイ法の優位性を生かしながら、イメージングサイトメーターを用いて蛍光強度に基づいたハイスループットの定量的測定系を確立する。もしセルベースアッセイ法の定量化が困難な場合には、ルシフェラーゼ免疫システム(LIPS)法による定量化の可能性についても検討を進める。本抗体の病原性に関して、cN1A抗原特異的リンパ球がsIBMの病態において病原性を発揮する可能性を考慮し、抗原特異的リンパ球が筋毒性や蛋白分解機構への直接的な病原性を有するかを解析することを目的に、リンパ球移入検証を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度に予定する抗原特異的リンパ球の筋毒性や蛋白分解機構への直接的影響を検討するリンパ球移入検証に交付額以上の予算が必要となる見込みから、次年度分に繰り越したため。
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Research Products
(11 results)