2020 Fiscal Year Research-status Report
非全身性血管炎性ニューロパチーの病態解明と新規治療法の開発
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20K07882
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小池 春樹 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (80378174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝野 雅央 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50402566)
飯島 正博 名古屋大学, 医学部附属病院, 特任准教授 (40437041)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非全身性血管炎性ニューロパチー / 血管炎 / 顕微鏡的多発血管炎 / 抗好中球細胞質抗体 / 補体 |
Outline of Annual Research Achievements |
血管炎は様々な原因で発症し、神経障害、特に末梢神経障害(ニューロパチー)を高頻度にきたすことが知られている。急性または亜急性に進行する場合が多く、治療により原疾患を寛解に導いても神経障害が残存することも多いことから、早期からの治療介入が必要な疾患である。末梢神経系のみが障害される非全身性血管炎性ニューロパチー(non-systemic vasculitic neuropathy; NSVN)は1987年にDyckらによって初めて報告された概念であり、顕微鏡的多発血管炎と並んで血管炎によるニューロパチーの主要な原因と考えられるようになっている。しかし、NSVNは非特異的なニューロパチーの病像を呈し、血液検査でもCRP値や血沈も含めて異常所見に乏しいことから診断に難渋する場合が多い。さらに治療反応性を示すマーカーもないことから、治療方針の確立も困難である。このことから、NSVNの早期診断、早期治療につなげることのできるバイオマーカーを明らかにする必要がある。 本研究ではNSVNの臨床病理像を、日常診療の場で鑑別が問題となる顕微鏡的多発血管炎と比較することにより全身性血管炎との連続性を明らかにするとともに、疾患マーカーとなる抗体の探索や前向きの治療反応性の検討などを行う。はじめに、患者レジストリを構築してNSVNの長期予後も含めた臨床像・病理像の検討を行う。特に、顕微鏡的多発血管炎による末梢神経障害と比較することによって全身性血管炎との連続性を明らかにする。抗体の探索ではマウスの神経組織と患者血清で特異的に反応する蛋白質の同定を行い、自己抗体が認識する抗原エピトープを同定した後、自己抗原の組織内分布を解析する。抗原候補蛋白をマウスに投与することによってNSVNモデルマウスを作成し、病態解析を行う。さらに、NSVNにおけるエクリズマブのにおける有効性と安全性についても検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
名古屋大学神経内科にコンサルテーションのあった症例も含めて発症年齢、初発症状、進行期間、障害の進展様式、重症度などの臨床像、および治療反応性も含めた長期予後を検討し、顕微鏡的多発血管炎に伴うニューロパチー、特にANCA陰性例と比較した。NSVNに関しては今後も新規の症例のconsultationが年間10例程度はあると予想され、最終的には50例程度での長期予後の検討を行う方針である。具体的には当院で診断したNSVN症例の既存例も含めた登録システムを構築して、臨床症候・電気生理学的検査所見・血液検査所見などの前向きの情報収集と生体試料のサンプリングを定期的に行う。さらに、腓腹神経生検の検体を用いて有髄線維密度と無髄線維密度の測定を含めた形態学的検討を行うとともに、ホルマリン固定および凍結の検体を用いて免疫組織化学的検討を行った。具体的には、顕微鏡的多発血管炎の初期病変といわれているANCA陽性好中球の小血管内皮への接着に伴う内皮細胞の障害の有無を光顕レベルでの検討、および電顕を用いた超微形態学的な検討にて確認した。NSVNと顕微鏡的多発血管炎では両者ともに壊死性血管炎の所見が見られるものの、血管内皮に接着した好中球はNSVNではほとんど認めないのに対し、顕微鏡的多発血管炎では多く見られ、後者では抗好中球細胞質抗体が病態に重要な役割を果たしていることが推測された。一方、補体の沈着をC3、C4、C5、MACなどに対する抗体を用いて検討したところ、顕微鏡的多発血管炎と比較してNSVNで補体沈着が多く見られたことからNSVNにおける補体を介した病態の重要性が示唆された。さらに末梢神経系における血管炎は神経上膜の細血管で生じることから、画像解析ソフトを用いて神経上膜の面積を測定し、好中球の接着や補体が沈着血管の数を定量化して顕微鏡的多発血管炎に伴うニューロパチーと比較した。
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Strategy for Future Research Activity |
NSVNの長期予後も含めた臨床像・病理像の検討に関しては今後も継続していく。症例のリクルートに関しては、名古屋大学大学院医学系研究科には、NSVNのみならず血管炎関連疾患全般に関して多数の生検および剖検例の蓄積がある。また、NSVNの認知度の高まりにつれて、今後も新規の症例が多数加わることが予想され、多数例での臨床病理学的なアプローチのみならず、治療反応性も含めた前向きの臨床研究も可能となる。免疫組織化学的検討や免疫電顕に必要な光学および電子顕微鏡をはじめとする機器は神経内科学教室および分析機器部門に設置されており、今後も本研究のために積極的に活用していく。これらの研究から得られた知見をもとに、NSVNを発症させる標的抗原の確定とモデルマウスの解析、治療への展開を目指す。本研究の研究分担者および研究協力者は研究代表者と同一の施設に在籍し、定期的に連絡調整を行っている。研究分担者の飯島正博は他の研究協力者とともに末梢神経疾患の生検/剖検検体を用いた病態解析とモデルマウスの解析を行っている。モデルマウスの解析手法は研究分担者である勝野雅央らによって確立されており、この手法を活用する。また、研究成果は国内および海外での学会で積極的に発表するとともに、名古屋大学神経内科ホームページ、機会があれば報道機関などを通して研究成果を社会・国民に発信していく。 以上のような計画遂行で、NSVNの病態を究明し新規治療法の開発へつなげることができると考える。
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Causes of Carryover |
(理由)実験補助者に予定していた人件費がコロナの影響で使用できなかった。 (使用計画)実験補助者の人件費に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)