Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症と視神経脊髄炎は, 異なる2つの特性「自己免疫」と「神経回路破壊」を特徴とする自己免疫性グリア病である. 重篤な運動・認知機能障害に対して有効な治療法がないため, 神経修復に向けた創薬はunmet medical needsの高い重要な領域となっている. 本研究では, 神経修復能を持つ「脳特異的な制御性・修復向性免疫細胞」のヒトホモログを同定し, 自己免疫性グリア病における脳の恒常性維持と神経回路修復のプロセスを探索する. 初年度 (2020年度) および二年度 (2021年度) は, 多発性硬化症, 視神経脊髄炎, その他の炎症性中枢神経系疾患における時空間依存的な免疫細胞動態の検討を行った. 脳病変を時空間的な4ステージ (初期病変 [I], 初期活動性病変 [EA], 後期活動性病変 [LA], 非活動性病変 [IA]) に分類し, 免疫細胞を解析した. 免疫組織化学 (IH) 法及びin situ hybridization (ISH) 法を用い, (a) 細胞表面分子 (CD3, CD20など), (b) マスターレギュレーター分子 (Foxp3, T-betなど), (c) サイトカイン分子 (IL-10, IL-6, IL-17な ど) の発現パターンから, 免疫細胞を自然免疫系列 (マクロファージ, 顆粒球など) と獲得免疫系列 (T, B細胞) に分類した. EAステージおよびneural repairが盛んと考えられるLAステージで, 特に自然免疫系列であるマクロファージと顆粒球に着目し, IH法等を使い, 検討を進めた. さらに「脳特異的な修復向性免疫細胞」の血液・髄液での挙動を探索の準備を開始した. 多発性硬化症, 視神経脊髄炎, その他の炎症性中枢神経系疾患の炎症制御性・組織修復向性・脳特異性プロファイルの検証を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年は3年計画の2年目である. 多発性硬化症と視神経脊髄炎の時空間依存的な免疫細胞動態の検討を行った. EAステージおよびneural repairが盛んと考えられるLAステージで, 特に自然免疫系列である顆粒球に着目し, IH法を使い, 検討を進めた. 「脳特異的な修復向性免疫細胞」の血液・髄液での挙動を探索の準備を開始した. 多発性硬化症, 視神経脊髄炎, その他の炎症性中枢神経系疾患の炎症制御性・組織修復向性・脳特異性プロファイルの検証を進めた. 一方, トランスクリプトーム解析は開始したが, 研究システムの構築に時間を要している. さらに血液・髄液での挙動探索の準備を開始したが, 研究プロセスが遅れている. このためやや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の通り, 多発性硬化症と視神経脊髄炎において, neural repairが盛んなステージに相当する病変に着目し, 同病変に優位に浸潤する免疫細胞の候補を絞ることができた. 一方, トランスクリプトーム解析の進行が遅れている. また血液・髄液での挙動探索の準備を開始したが, 研究プロセスが遅れている. このためやや遅れていると判断した. 現在の状況を踏まえ, 3年度 (2022 年度) は, 研究をさらに推進するために, 研究協力者を維持した上で, 新たに分子生物学的手法を加え, トランスクリプトーム解析を推進するシステムと, 血液・髄液を解析するシステムを確立する方針である.
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Causes of Carryover |
研究実績概要の通り, 初年度は本研究の基盤となる成果を挙げた. しかし一方で, 二年度は網羅的トランスクリプトーム解析と免疫細胞機能解析は検討の途上であり, 完了していない. このために次年度使用額が生じた. 三年度以降は, 網羅的研究, 免疫機能解析を行い, 研究の総括を行う計画である.
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