Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症と視神経脊髄炎は, 異なる2つの特性「自己免疫」と「神経回路破壊」を特徴とする自己免疫性グリア病である. 重篤な運動・認知機能障害に対して有効な治療法がないため, 神経修復に向けた創薬はunmet medical needsの高い重要な領域となっている. 本研究では, 神経修復能を持つ「脳特異的な制御性・修復向性免疫細胞」のヒトホモログを同定し, 自己免疫性グリア病における脳の恒常性維持と神経回路修復のプロセスを探索する. 初年度 (2020年度) から最終年度 (2022年度) に, 多発性硬化症, 視神経脊髄炎, その他の炎症性中枢神経系疾患における時空間依存的な免疫細胞動態の検討を行った. 脳病変を時空間的な4ステージ (初期病変 [I], 初期活動性病変 [EA], 後期活動性病変 [LA], 非活動性病変 [IA]) に分類し, 免疫細胞を解析した. 免疫組織化学 (IH) 法及び in situ hybridization (ISH) 法を用い, (a) 細胞表面分子 (CD3, CD20, CD66bなど), (b) マスターレギュレーター分子 (Foxp3, T-bet, GATA2など), (c) サイトカイン分子 (IL-17, IFN-gammaなど) の発現パターンから, 免疫細胞を自然免疫系列 (マクロファージ・ミクログリア, 顆粒球など), 獲得免疫系列 (T, B細胞), 自然免疫と獲得免疫を橋渡しする免疫細胞系列 (innate T細胞, innate lymphoid cells) に分類し, その挙動をステージ別に解析した. 各免疫細胞系列のステージ依存的な挙動を明らかにし, その役割を推測した. 多発性硬化症, 視神経脊髄炎, その他の炎症性中枢神経系疾患の炎症制御性・ 組織修復向性・脳特異性プロファイルの検証を行った.
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