2020 Fiscal Year Research-status Report
うつ病のスパイン密度減少におけるArcadlinの関与
Project/Area Number |
20K07930
|
Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
竹宮 孝子 東京女子医科大学, 看護学部, 非常勤講師 (70297547)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 万留実 東京女子医科大学, 医学部, 研究技師 (10867336)
泉 光輔 東京女子医科大学, 医学部, 研究技師 (90867334)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | うつ病 / Arcadlin / シナプス密度 / 慢性的社会的敗北ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞接着分子のプロトカドヘリンarcadlin/PCDH8(Arcadlin)は、強い神経活動後に大脳皮質などで誘導され、TAO2-MEK3-p38 MAPKの活性を介して シナプス形態変化やスパイン密度減少に関わる。 一方で、うつ病にはスパイン密度減少があることが知られており、そのメカニズム解明は今後のうつ病の病態解明と治療につながる可能性がある。本研究は、そのうつ病で見られるスパイン密度減少にArcadlinが関わるかどうかを確かめることである。
初年度は、うつ病を引き起こす慢性ストレス動物モデルとして慢性的社会的敗北ストレス(CSDS)の作成条件を検討し、そのCSDS実験プロトコルに沿って、Arcadlinノックアウトマウス(acad(-/-))、ヘテロマウス(acad(+/-))、野生型マウス(acad(+/+))にうつ病が発症するか検証した。CSDSは10日間実施した。
その結果、acad(+/+)は2日目に体重が10%減少し、8日目には20%以上減少するものが全体の40%あり10日目には目立った外傷がないままそれらのマウスは死亡した。一方で、acad(+/-)は徐々に体重が減少したものの最終的にも7%の減少に留まり、死亡したマウスはいなかった。また、acad(-/-)は3日目に5%の体重減少が認められたものの、その後一旦回復し10日目でも5%の減少に留まった。外傷により死亡したマウスは存在したものの、それ以外のマウスに変化はなかった。体重減少とその後の死亡は重度のうつ病状態である可能性がある。以上の結果から、Arcadlinの発現があるacad(+/+)は、CSDSでうつ病と考えられる状態となるが、acad(+/-)とacad(-/-)はうつ病状態にはならないことがわかった。つまり、うつ病発症のメカニズムにArcadlinの発現誘導が関わる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染拡大のために研究所の使用が制限されたり禁止された期間があったこと、通常の対面講義が全てオンライン講義に変更になったことや教育システムの変更などが度重なり、教育関係の調整に時間を費やす必要が出たことから、研究時間が大幅に減少したことなどにより研究計画通りに進めることはできなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1年次に実施予定だったacad-/-とacad+/+に対するCSDS負荷前後の行動評価、CSDS負荷後のArcadlin発現量測定およびスパイン密度測定を行い2群を比較検討する。
続いて、2年次に計画していた、acad-/-とacad+/+の内側前頭前皮質に脳波計測用の電極挿入手術を行いCSDS負荷群にはCSDS負荷を10日間加え、コントロール群はその まま1匹での飼育を続ける。10日間の翌日、ケージ内における30分間の脳波測定と社交性試験環境30分間の脳波測定を行い、脳波のスペクトラ ム解析を行って各群を比較する実験をできる限り進める。
|
Causes of Carryover |
1年次の研究の遅延に伴い、実験で使用予定だったマウスの購入費用が2年次に繰り越されたから。
|