2020 Fiscal Year Research-status Report
ベンゾジアゼピン受容体作動薬の減量・中止をめざして:うつ病治療での前向き研究
Project/Area Number |
20K07933
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
土生川 光成 久留米大学, 医学部, 准教授 (40343701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内村 直尚 久留米大学, 医学部, 学長 (10248411)
森 裕之 久留米大学, 医学部, 助教 (20461460)
小曽根 基裕 久留米大学, 医学部, 教授 (50246386)
角間 辰之 久留米大学, 付置研究所, 教授 (50341540)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | うつ病 / ベンゾジアゼピンの減量・中止 / スボレキサント |
Outline of Annual Research Achievements |
【対象と方法】不眠を有するうつ病患者6名(男性:2名、女性:4名)に抗うつ薬であるデュロキセチンと睡眠薬であるベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)の併用療法を1年間行った。BzRAsに関しては初診時に未内服の場合はエスゾピクロン2mgを投与し、他のBzRAsを使用している場合はそのまま継続投与した。治療早期にBzRAsを中止できない場合に、治療3~6ヵ月の間にBzRAsとは作用機序が異なり依存や転倒・骨折の副作用が少ない睡眠薬であるオレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントを追加投与することで、BzRAsの1年間の長期使用を減らせるかどうかを検討した。 【結果】6名中4名(66.7%)で治療1年後までにBzRAsを中止でき、2名(33.3%)が治療1年後もBzRAsを継続していた。つまり、BzRAsの中止群が66.7%、長期使用群が33.3%であった。BzRAsを中止できた4名のうち1名はスボレキサントの追加投与は行われず、治療1ヵ月でBzRAsが中止された。3名では治療3~6ヵ月にスボレキサンが追加投与され、BzRAsの中止時期は各々治療後5ヵ月、9ヵ月、5ヵ月であった。 我々が以前に行ったうつ病患者288名の治療1年間の後方視調査(スボレキサントの追加投与なし)では、BzRAsの中止群が25.7%、長期使用群が74.3%でBzRAsの長期使用が高率であったが、本研究においてスボレキサントを追加投与することによりBzRAsの1年間の長期使用を顕著に減ずることが期待できる。今後症例数を増やし検討する必要がある。 【まとめ】不眠を有するうつ病患者での抗うつ薬とベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)の併用療法において、治療3~6ヵ月のスボレキサント追加投与はBzRAsの長期投与を減少させる効果がある可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の被験者として令和2年度中にうつ病患者15名に研究を行う予定にしていたが、実際には1年間の治療を完了した上記6名と現在治療中の2名の計8名の登録にとどまっており、当初の計画よりやや遅れている。これらは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大による外来受診者数の減少によるところが大きい。 また本研究はベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)の減量・中止を目的とした研究であり、その際にアクチグラフ装着により客観的な睡眠指標も同時に測定することにしている。当初はアクチグラフをR2年4月中に購入する予定であったが、COVID-19感染拡大により、業者との連絡や機器(アクチグラフ)の購入が大幅に遅れ、アクチグラフの納品がR2.11.17になってしまったため、被験者の同意を得てアクチグラフ装着ができた被験者は一人もいなかったため、客観的睡眠指標の取得に関しては当初の計画よりも大幅に遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに本研究に登録したうつ病患者は計8名であり、令和3年度にはさらに12名のうつ病患者、令和4年度にも12名のうつ病患者、計32名のうつ病患者の登録を計画する。 本年度は6名中4名(66.7%)で治療1年後までにベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)を中止でき、我々が以前に行ったうつ病患者288名の後方視調査(スボレキサントの追加投与なし)でのBzRAs中止率(25.7%)に比べ良好な結果であったが、被験者を増やしても、本年度のBzRAs中止率(66.7%)を維持できるかを検討していく。 またアクチグラフ装着により客観的な睡眠指標を取得できたうつ病患者が現在までにいないため、令和3年度には8名、令和4年度にも7名、計15名のうつ病患者での客観的睡眠指標獲得を目標とする。 これらが達成できれば、32名の不眠を有するうつ病患者に対して抗うつ薬とベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)の併用療法を行った際の治療1年後のBzRAs長期使用の頻度を算出でき、さらに治療早期(3~6ヵ月)にオレキシン受容体拮抗薬であるスボレキサントを追加投与することでどの程度BzRAsの長期投与を減少させることをできるかを明確にできる。さらに15名のアクチグラフでの客観的睡眠指標がBzRAsの長期投与にどのように関連しているかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究はベンゾジアゼピン受容体作動薬(BzRAs)の減量・中止を目的とした研究であり、その際にアクチグラフ装着により客観的な睡眠指標も同時に測定することにしている。当初はアクチグラフをR2年4月中に購入する予定であったが、COVID-19感染拡大により、業者との連絡や機器(アクチグラフ)の購入が大幅に遅れ、アクチグラフの納品がR2.11.17になってしまったため、R2年度はアクチグラフ装着の同意を被験者から得ることができなかった。R2年度の人件費の所要額は60万円としていたため、60万円を次年度使用額とした。また学会発表の旅費のためR2年度の所要額は10万円としていたが、新型コロナウイルス感染拡大のため当該年度は学会発表を行わなかったため、10万円を次年度使用額とした。その他として文献や備品でR2年度の所要額は5万6000円としていたが、実際の使用額は7620円であったため、48380円を次年度使用額とした。 令和3年度は12名のうつ病患者を本研究に登録し、そのうち8名の患者でアクチグラフ装着の同意を得て客観的睡眠指標を取得する計画とする。このため謝礼費として4万×8名=32万のQUOカードを購入する予定である。またR3年度は学会発表にて10万円使用する予定である。
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Remarks |
土生川光成:うつ病に併存する不眠症に対する薬物療法~ベンゾジアゼピン系睡眠薬長期使用の見直しと新たな治療戦略~. 福精協筑後ブロック院長会学術集会, 2020.7.27
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