2020 Fiscal Year Research-status Report
リポ多糖の前投与がミクログリアを介した抑うつ症状の発症を抑制するメカニズムの研究
Project/Area Number |
20K07958
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
古賀 農人 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 精神科学, 助教 (70744936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸田 裕之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 精神科学, 准教授 (00610677)
佐藤 泰司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 教授 (10505267)
太田 宏之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 薬理学, 講師 (20535190)
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 准教授 (70531391)
中島 正裕 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 助教 (70738103)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | リポ多糖 / アストロサイト / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の検討では、社会性敗北ストレス負荷、慢性拘束ストレス、拘束水浸ストレスや全身炎症モデルなど、精神障害を引き起こすモデルを作成し、それらのモデルに対して、比較的低用量のリポ多糖を事前に投与した場合の、精神障害様行動について分析した。その結果、社会性敗北ストレス負荷により引き起こされる不安様行動異常、慢性拘束ストレスや水浸拘束ストレスによる抑うつ症状様行動、炎症が関連する社交性低下について、事前のリポ多糖投与により、発症が抑制された。また、行動レベルの分析に加え、生化学的な分析を検討した。以前行った予備的な検討から、事前のリポ多糖投与によりPeripheral Benzodiazepine Receptor(PBR)の発現上昇が認められ、ミクログリアの活性化が関与すると示唆される結果が得られていたが、厳密にはPBRはミクログリアの他に、アストロサイトにも発現が認められるため、免疫組織染色によりミクログリアマーカー(IBA1)、アストロサイトマーカー(GFAP)、PBRの多重染色を行い、どちらの細胞の活性化がリポ多糖の事前投与による精神障害様行動異常の発症抑制に関与するかについて検討した。その結果、リポ多糖の事前投与はIBA1と共発現するPBRの発現量を有意に減少させ、GFAPと共発現するPBRの発現量には影響を与えなかった。 以上の結果から、リポ多糖の事前投与による精神障害発症の抑制効果、ならびに、その生化学的な機序として、脳におけるミクログリアの活性化の抑制が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リポ多糖の事前投与による精神障害様行動異常の発症抑制の部分については申請した計画に従って実験を遂行でき、期待された実験結果が得られた。しかしながら、ミクログリアの活性化マーカー遺伝子プロモータにルシフェラーゼ遺伝子(発光遺伝子)を接続してミクログリアの活性化を可視化する計画については、ルシフェラーゼに対する基質の代謝によって発生する発光が分解されるまでに時間がかかり、発光が維持されてしまう問題が発生した。そのため、ミクログリアの活性化状態をリアルタイムで可視化する項目については、引き続き条件検討などが必要となるため、当初よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度得られた知見を元に、リポ多糖の事前投与による精神障害発症抑制について、ミクログリアの機能に着目したさらに詳細な機序の解明を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
統計解析のオンライン講習受講(ClipExtension)が今年度開催であるが、受講終了が2021年度のため、これに関する支払いが次年度となるため。
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