2022 Fiscal Year Annual Research Report
マイクログリア、免疫・炎症因子異常からみた統合失調症の精神刺激薬モデル研究
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20K07961
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊藤 侯輝 北海道大学, 医学研究院, 客員研究員 (40455663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 修平 北海道大学, 大学病院, 助教 (30880091)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 統合失調症 / 脳内炎症 / 覚醒剤動物モデル / 行動感作 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年脳内の炎症反応や免疫系の異常を統合失調症の発症や症状増悪の一因とする脳内炎症仮説が注目されているが、その病態生理は十分に解明されていない。そこで本研究ではマウスにメタンフェタミン(METH)を反復投与することによって作成される統合失調症モデル動物を用いて、脳内炎症が統合失調症脳の発症や症状の重症化に与える影響を検証した。METHモデルは6-7週齢のC57BL/6J雄性マウスに1mg/kgのMETHを5日間連日反復投与して作成した。行動評価は7日間の休薬期間の後再度同量のMETHを投与し、統合失調症の陽性症状様の応答である行動量の増加(行動感作)を誘発した。炎症反応が精神症状に与える影響を検証するため、行動感作を誘発する4時間前にリポポリサッカライド(LPS)の腹腔内投与あるいは2時間の拘束ストレス(RS)を行って炎症を惹起させ、行動感作を評価した。その結果LPSおよびRS群は対照群と比較して、行動感作が抑制された。また、TNF-α阻害薬であるエタネルセプトの事前投与によって、RSによる反応のみが阻害されることが示された。さらにCOX-2阻害薬であるピロキシカムのの事前投与によって、LPSによる反応のみが阻害されることが示された。これらの行動変容時にマイクロダイアリス法を用いて、線条体のドパミン量を測定したところ、対照群(前処置なしのモデル動物)あるいはLPS前処置群では行動感作時にドパミン量の増加が認められた。しかしながらRS前処置群では行動感作時にドパミン量の増加は認められるが対照群とLPS群と比べて、その増加量は有意に少なかった。一方で、エタネルセプトの事前投与によって、RS前処置群においても有意なドパミン量の増加が認められた。これらの結果から、急性の軽微な炎症反応はその種類によって、異なるメカニズムで統合失調症の精神症状を抑制している可能性が示唆された。
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