2020 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーを介したうつ病の分子機構解明と新規治療法の開発
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20K07962
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
兪 志前 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (60451639)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オートファジー / うつ病 / ミクログリア |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,うつ病患者の末梢単球におけるオートファジー誘導因子の発現増加, およびオートファジー阻害因子の発現減少が報告されている. 死後脳研究においても,うつ病患者の前頭前野におけるオートファジー抑制遺伝子の発現減少が見られ, うつ病の発症にオートファジー活性の関与が示唆されているが,その分子機構は明らかになっていない.うつ病モデルマウスのマイクロアレイデータおよびうつ病患者の死後脳マイクロアレイデータを解析し,オートファジー誘導因子であるBeclin1(Atg6)遺伝子の有意な発現増加を見出した. また, うつ病患者の前頭前野の死後脳のデータベースにおいて, オートファジーの隔離膜形成に必須な遺伝子(ATG5 , ATG7, ATG12),およびオートファゴソームの形成マーカーである LC3 mRNAの有意な発現増加を確認した. うつ病モデルマウスの前頭前野においても, うつ病患者の死後脳と同様なオートファジー関連遺伝子であるBeclin1, Atg5 , Atg7, Atg12,およびLC3 mRNAの有意な発現増加を定量PCRで確認し, ストレス負荷による前頭前野でのオートファジー活性を明らかにした.さらに,ストレスに耐性を示したマウスにおけるAtg12およびLc3 遺伝子の発現はストレスに脆弱性を示したマウスと比べて有意に増加し,オートファジーの活性化がストレス誘導性のうつ様行動を抑制する可能性が示唆された.また,ストレスに耐性を示したマウスの前頭前野におけるミクログリア由来のLC3タンパク質の有意な発現増加が確認され, ミクログリアのオートファジー活性がストレスに誘発されたうつ様行動に関与することも示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理化学研究所から Atg7 flox/flox マウスを導入し,ミクログリアの特異的マーカーである Cx3cr1 の Cre+ マウスと交配した.現在第 1 世代 (F1) のミクログリア特異的 Atg7 欠損マウスを樹立した.今後,F3 まで繁殖する予定である.さらにこれらのマウスの平常時のうつ様行動を検証するために,オープンフィールド試験,高架式十字迷路試験,明暗遷移試験,Y字型迷路試験,スリーチャンバー社会性試験を行う予定である.さらに,ストレス負荷下で対照群と比較して上述のうつ様行動の悪化の程度を評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
我々の結果は,反復挫折社会ストレスに誘導されるうつ様症状およびオートファジーの活性化がミクログリアに関与することを見出し,オートファジーの活性化はうつ病発症後にも中枢神経系に対する保護作用を有することが示唆される.今後,オートファジーの上流である mTOR の活性をうつ病モデルマウス,ミクログリア特異的 Atg7 欠損マウスおよびうつ病患者の死後脳を用いて検討する.また,既存 mTOR 系の抗うつ薬であるケタミン,および mTOR 以外の副作用が少ない抗うつ薬を用いて,ミクログリア特異的 Atg7 欠損マウスのうつ様行動に対する抑制効果,および mTOR の発現変化を検討する.さらに,オートファジーの活性化による神経保護作用とうつ病の関連性を明らかにするために,オートファジーの活性化とうつ病患者の重症度との相関を検討する予定である.
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