2022 Fiscal Year Research-status Report
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20K07968
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 恵子 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点講師 (90379652)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | タウ / スプライシング / iPS細胞 / 脳オルガノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化を背景とした認知症患者の増加が問題となっており、認知症の根本的な治療法の確立は急務である。認知症の大多数を占めるアルツハイマー病や前頭側頭葉変性症では、認知症の臨床症状がタウ蛋白の異常蓄積や神経細胞死とともに出現してくることが知られており、タウ蛋白は治療介入のために重要なターゲットである。タウ蛋白はスプライシング様式によって3リピートタウと4リピートタウに分類される。4リピートタウはβシート化を促進し、神経毒性が高いタウオリゴマーの形成を促進する。また、我々は神経細胞内のタウオリゴマーの増加は、カルシウムイオンの細胞内への異常流入を生じ、神経細胞死を来しやすいことを見出している。本研究では、アンチセンスオリゴや化合物を用いて、認知症患者神経細胞におけるタウのスプライシングやその発現量の制御を行い、タウオリゴマーの減少と神経細胞死抑制を可能にする認知症治療候補薬の同定を目的としている。 本年度は、前頭側頭葉変性症患者の疾患特異的iPS細胞から作製した神経細胞を用いて、前年度に見出した化合物およびその周辺を含む化合物のタウオリゴマー蓄積や細胞死に対する有効性評価を行った。さらに、前頭側頭葉変性症患者のiPS細胞から作製した脳オルガノイドを用いて有効性評価を実施した。また、他のタウタンパク蓄積を来す神経疾患においても化合物の有効性評価を実施するため、アルツハイマー病や進行性核上性麻痺等の疾患特異的iPS細胞を用いて疾患モデルの構築を実施した。今後は、タウオパチーを来す疾患に対する化合物の評価とそのメカニズムの解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前頭側頭葉変性症患者の疾患iPS細胞を用いて治療薬候補となりうる化合物を見出し、その有効性を検討している。当初は、二次元培養のiPS細胞由来神経細胞を用いた解析を計画していたが、脳オルガノイドを用いた解析に発展させることができている。また、前頭側頭葉変性症以外のタウオパチーを来す疾患についても脳オルガノイドを用いた疾患モデリングを実施している。研究は順調に進捗しているが、脳オルガノイドの作製には数か月単位の時間を有するため、研究を発展させるために研究期間の繰り越しを行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
前頭側頭葉変性症およびそれ以外のタウオパチーを来す疾患の脳オルガノイドを用いて、疾患表現型の解析と治療薬候補化合物の有効性評価を行う。前頭側頭葉変性症のみならず、タウ蓄積を生じる神経変性疾患を広く対象とし得る治療薬候補の同定を目指す。
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Causes of Carryover |
脳オルガノイドを用いた実験により研究の発展が期待できるが、脳オルガノイドの培養に数か月単位の時間を要するため、本研究の次年度への繰り越しを行うこととなった。
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