2020 Fiscal Year Research-status Report
タウ蛋白PETイメージングからみた老年期うつ病の治療反応性の解明
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20K07981
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
荒川 亮介 日本医科大学, 医学部, 准教授 (40350095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 善朗 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (20213663)
舘野 周 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50297917)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | うつ病 / タウ蛋白 / PET |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者のうつ病治療においては、通常の薬物療法に反応が乏しいことがしばしば見受けられる。その背景に、アルツハイマー型認知症をはじめとする器質性疾患の前駆症状としてのうつ状態、もしくはその合併があるとする報告があるが、臨床症状からの判断だけでは、その鑑別や確認を行うのは困難であることが多い。アルツハイマー型認知症の病態生理の代表的なものとして、老人斑(アミロイドβ)と神経原繊維変化(タウ蛋白)があげられる。アミロイドβについては、PETにより生体内において脳内集積を評価出来るようになっており、アルツハイマー型認知症で認められる病理が高齢者のうつ病発症に関与している可能性が報告されている。一方、アルツハイマー型認知症の認知機能障害の程度は、タウ蛋白の局所集積と関連するという報告があり、タウ蛋白による局所神経細胞脱落が精神・神経症状の出現、進行に強く関与していることが示唆されている。近年、タウ蛋白を対象としたPETリガンドの開発が盛んに行われているが、従来の[11C]PBB3等のPETリガンドについては、脳内のタウ蛋白の定量に一定の制限があることが指摘されている。これらの問題点を改良した[18F]PM-PBB3が開発され、臨床応用が進められているところである。 本年度は、2名の寛解期にあるうつ病患者に対して、[18F]PM-PBB3を用いたPET測定を行った。当研究施設では初めての[18F]PM-PBB3を用いたPET測定であり、その測定リガンドの合成やデータ収集、脳内集積の解析までが問題なく行えることを確認した。1名については、高い脳皮質の集積を示し、一方、もう1名については脳皮質の集積は認められなかった。このことから、同様の寛解期にあるうつ病患者においても、その脳内のタウ蛋白の集積に大きな差があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はCOVID-19により、研究実施施設への患者立ち入りが制限されていたこと、被験者のリクルートも制限を受けていたことから、当初予定していた症例数には到達していない。ただし、2名の被験者にPET検査を実施することができ、感染対策を含めた具体的な実施方法の改善を提案することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
実際のPET測定やその定量解析に関しては、すでに確立できたと考えられる。COVID-19の影響は持続しているが、被験者のリクルートや感染対策も含めて、今年度の経験を生かしながら、より実施可能な体制を整備していくことで、データ収集を速やかに行っていく。
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Causes of Carryover |
本年度の進捗状況は当初予定より遅れている。そのため、本年度の予算も用いて次年度のデータ収集を行うことで、全体の研究計画に沿った実施を目指す。
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